研究課題/領域番号 |
22H01734
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山田 正太郎 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70346815)
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研究分担者 |
京谷 孝史 東北大学, 工学研究科, 教授 (00186347)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 斜面崩壊 / 土砂流動 / 混合体理論 / 限界状態理論 / 不飽和土 / 弾塑性 / 有限変形 / フェーズフィールド法 |
研究実績の概要 |
本研究では連続体近似に基づく最新の計算地盤工学理論に則り,斜面災害の数値シミュレーターを開発することを目的とする. 研究初年度は,限界状態土質力学において開発されたCam-clay modelを変形勾配の乗算分解理論に基づき有限変形化することを試みた.既往の乗算分解型Cam-clay modelは限界状態理論の根幹を成す実験事実である状態境界面を描くことをできないことを指摘するとともに,熱力学的考察を通して塑性体積変化を生じる場合に適用可能な応力を新たに見出した.この考察に基づき乗算分解型Cam-clay modelを再構築することで真に限界状態土質力学に従う土の弾塑性構成則の基本形が完成した. 現在の不飽和土を対象とした解析手法のほとんどは三相混合体理論に基づいて構築されている.しかし,この手法では,飽和状態においても間隙空気圧を求めなければいけないことに起因して数値的な不安定性が生じる.そこで間隙水と間隙空気を同列な間隙流体として取り扱うことで二相混合体理論に基づいてその挙動を扱う手法を開発することを試みた.この手法では,間隙水と間隙空気の界面の移動をフェーズフィールド法により近似的に取り扱う.このとき,界面は不飽和領域となる.本年度は土骨格の動きを無視した不飽和浸透流解析を実施し,この手法により既往の不飽和浸透実験の結果を概ね再現できることを示した.ただし,現段階では,水分特性曲線によって表現されるような土の保水特性を十分に考慮できていない.そこで本研究では,フェーズフィールド法を用いたマクロ不飽和浸透流解析手法を別途開発し,土の保水性試験をシミュレートすることでインク瓶効果により水分特性曲線にヒステリシスが生まれる様子を可視化した.今後はこの方法を元に,マクロ不飽和浸透流解析において如何にして水分保持特性を表現すべきか検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が軸とする土質力学理論の一つは限界状態理論である.この理論の成果物ともいえるCam-clay modelを乗算分解型有限変形理論に基づいて再構築できたことは今後の研究にとって大きな意味を持つ.今後はこのモデルに骨格構造概念などを取り入れることにより高い表現能力を有する土の弾塑性構成則が開発できると考えている. 本研究が軸とする理論のもう一つは混合体理論である.三相混合体理論に基づいて表現されることの多い不飽和土をフェーズフィールド法を用いて二相混合体理論に基づいて表現する手法を新たに考案した.これにより,不飽和土の解析に特有の数値的な不安定性を回避できる可能性が見出された.これらの観点から本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に再構築した乗算分解型Cam-clay modelに骨格構造概念や誘導異方性を導入することにより,高い表現性能を有するモデルに拡張することを狙う.また,初年度に開発したフェーズフィールド法を用いた二相混合体理論に基づくマクロ不飽和浸透流解析では土骨格の運動は無視しているため,この手法を土の有限変形解析手法と連成させることを試みる.また,別途開発したミクロ不飽和浸透流解析を用いて,マクロ不飽和浸透流解析に帰納すべき土の水分保持特性について考察する.これらの手法は有限要素法をベースに進めるが,最終的に斜面崩壊を表現することを視野に粒子法への導入も試みてゆく.
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