研究課題/領域番号 |
22H01748
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
大窪 健之 立命館大学, 理工学部, 教授 (10252470)
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研究分担者 |
金 度源 立命館大学, 理工学部, 准教授 (40734794)
室崎 益輝 兵庫県立大学, 減災復興政策研究科, 特任教授 (90026261)
牧 紀男 京都大学, 防災研究所, 教授 (40283642)
里深 好文 立命館大学, 理工学部, 教授 (20215875)
藤本 将光 立命館大学, 理工学部, 准教授 (60511508)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 地震火災対策 / 歴史都市 / 防災水利整備計画 / 防火計画 / 自然水源 / 地域防災計画 / 京都 / 減災の知恵 |
研究実績の概要 |
初年度となる今年度は、水利環境の現況に関する詳細な調査を実施し、消防活動利用上の課題と対策の可能性について明らかにした。 具体的な研究対象としては、日本を代表する歴史都市・京都の中でも、「高瀬川」や「西高瀬川」をはじめ「琵琶湖疏水分線」を経て「堀川」へとつながるような運河系と、「本願寺水道」と「御所水道」の管路系を対象として、利水環境の防災的かつ日常的な利活用に向けた有効性を検証するため、歴史を含む詳細調査を実施して課題とポテンシャルを検証した。調査内容については以下に示す。 (a)対象地域の地理的特性・防災対策及び地震被害想定等の調査:立地、地形、気候条件等の地理的条件や、流速、流量等に関する水理特性を調査した。 (b)関連する地域の被災史および地域史に関する調査:阪神淡路大震災や糸魚川駅北大火など、対象地域の被害史や地域の歴史を調査することで、過去から現在へ至るまでの火災被害をふまえ、将来起こる可能性のある災害を整理した。 (c)地域住民及び地域組織の日常活動と防災活動調査:一方で現在における地域の人的、体制的な防災活動状況を把握するため、防災訓練などの活動記録やそれぞれの活動を担う自治体、地域住民へのヒアリングを基に詳細な調査を行った。消防局をはじめ行政機関へのヒアリングは実施できたが、地域住民への調査については、コロナ禍の影響で次年度以降の課題となった。 (d)対象利水環境における利活用方針の導出:上記の物理的環境、地域の災害史や防災活動の現状を基に、今後拡張可能な潜在的防災力について検討を行った。以上の調査結果をGIS上のデータとして統合することで、現状での各項目の比較や、今後の具体的な活用方針を導出するための準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している。 一方で、京都市以外の他地域における先進事例の調査が、コロナ禍により先方行政機関との調整が叶わず、地域住民の防災活動内容や水利活用状況に関する調査など、一部の調査を次年度の計画に組み込むことで合理化を図ることとなった。 他方では、水利環境の正確な把握のために、測量や実測等の作業を外部委託を含めて実施する予定となっていたが、作業方法を見直すことで一部の作業を研究室の学生等の協力によって実施できたために、経費の節約が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)まず防災水利としての再生可能性を検証する。以下の手順で伝統的な利水環境を防火用水として利活用する提案を行い、有効性を満たすための適切な整備技術を検討する。(a)現状改善における可能性評価:課題解決へ向けた社会実験による有効性評価や水理計算等の実証的検証を行い、改修方法別にシミュレーションを行うことで検証する。(b)利活用案における可能性評価:調査対象である金沢の用水や白川郷での整備事業をはじめ、類する事例を収集して実現に至ったプロセスについて詳細調査し、事業化における課題と要件を抽出する。さらに京都においては、「北ルート(琵琶湖疏水分線と堀川)、東ルート(御所水道)、南ルート(本願寺水道)」を主な対象として消防水利の可能性評価に取り組む。上記のルート以外にも震災時に消防水利が必要とされる「西ノ川ルート(龍安寺鏡容池から御室川までの水路)と西ルート(西高瀬川)」について検討範囲を拡張することで、他地域への汎用性を担保する。地震火災の被害想定により定まる災害時必要水量に応じるべく利水環境の改善案を策定し、既存水利の活用可能性を定量する。 (2)できればさらに、整備技術の検証とその有効性の評価を市民による防火活動や消防車両による消火活動に資するべく整備指針を、以下の手順で開発する。(a)整備技術や手法の開発:歴史的水利の文化遺産としての修復技術等の観点と、防火用水としての利活用の観点の双方を満たすべく、文化的価値を活かしつつ性能や機能を改善するための利水環境整備技術の開発に取り組む。(b)整備と改修における有効性の評価:防火用水としての有効性評価は、水利の到達圏解析や火災シミュレーションの結果に照らして検証するが、日常活用における利便性や歴史的遺産としての価値への影響について関係者からの評価分析も行い、歴史的な水利に対する整備計画案への評価方法を整理する。
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