触媒や光触媒など、表面上での化学反応は、表面近傍に存在する点欠陥が重要な役割を担っている。このため、表面欠陥と触媒性能の因果関係及びその物質毎の傾向を知ることが、 革新的触媒・光触媒材料の開発には必要不可欠である。そこで本研究では、酸化物表面近傍 での酸素空孔を対象に、第一原理計算に基づいた系統的研究を行う。本研究の鍵となるのが、 表面近傍での点欠陥に関する高精度第一原理計算手法の開発である。研究開始時点では、表面上の欠陥形成エネルギーを、系統的に勝つ高精度に計算する方法がなかった。そこで、2022年度には、これを実現するための手法を開発した。そして、その手法を用いて汎用的なpydefect_2dプログラムを開発した。このプログラムは、2次元半導体材料の点欠陥解析に広く利用されることを目指しており、オープンソースとして公開している。また、このプログラムの応用例として、代表的な2次元半導体材料であるMoS2やTeO2における固有点欠陥およびドーピングに関する系統的計算も進めている。これにより、これらの材料の特性や性能に関する一般的理解が深まり、新たな応用の可能性が広がることが期待される。
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