研究実績の概要 |
初年度の作成した非晶質前駆体薄膜と、SrTiO3(001)基板上にCube-on-cubeの方位関係でエピタキシャル成長した結晶化薄膜について、STEM-EELS法によりTi-L2,3及びO-Kエッジ近傍の内殻励起スペクトルによるエネルギー損失吸収端微細構造(ELNES)の測定・解析を行った。 まず、Ti-L2,3エッジのELNESについて述べる。Ti-L2,3エッジは、配位環境の対称性によってどのように5重に縮退したd軌道がどのように解けるかを示しており、BO6(B:Ti,Zr)型のOh対称場の下ではt2gとegに帰属されるピークに分裂する。ここで着目すべきは、非晶質の段階で既にt2gとegに分裂したOh場、つまりBO6型の配位構造が形成されていることである。特に、配位子場分裂幅に着目すると、非晶質相は菱面体晶もしくは擬立方晶的な配位構造、結晶化した界面層は正方晶に類似した配位構造をとることが明らかになった。 すなわち、非晶質前駆体形成段階にて、Oh対称場を持つBO6(B:Ti,Zr)型のクラスターが形成されていることを示唆していることが初めて明らかになった。 次に、O-KエッジのELNESについて述べる。O-K ELNESは、3つの主要ピークから構成され、吸収端側からTi3d(Zr4d)-O2pの混成、Pb6p-O2pの混成を示し、非晶質の段階でこれらの化学結合ができている。したがって、非晶質薄膜内では、Oh対称場を持つBO6(B:Ti,Zr)クラスターがOを介してPbと結合を作っており、ペロブスカイト型構造の前駆状態となっていることを示す。一方、第3ピークはO-O原子間距離の広い分布を示し、不均一に歪んだBO6八面体が不均質に繋がった短距離秩序構造を持つと考えられる。
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