研究課題/領域番号 |
22H01769
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
戸田 健司 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20293201)
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研究分担者 |
渡邉 美寿貴 新潟大学, 自然科学系, 助教 (60847987)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 固相反応 / 水 / ソフト化学 / 固体酸 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、申請者のグループで開発した「水により加速する固相反応法(Water-Assisted Solid-State Reaction)」の反応メカニズム解明に向け、水の役割を明らかにすることである。「水により加速する固相反応法(略称WASSR)」は室温から220℃程度の低温(多くの場合に温度は80℃以下で良い)でわずかな水を加えて混合もしくは容器の中で保持するだけで高機能セラミックスを合成できる。これは従来手法と全く異なる、低エネルギー・安全な画期的な合成手法である。 含水試料の大気圧下の観察が可能な特殊容器を用いて高倍率での観察が可能な走査型電子顕微鏡(SEM)により反応を評価する予定であったが、特殊走査電子顕微鏡の重要部品の納品の遅れにより、反応観察実験を延期して実施する必要が生じた。これは、当初の想定に反し、国際流通の遅延により重要部品である電源およびCMOSカメラの入手が年度内に不可能となったためである。部品は電子顕微鏡にカスタマイズして中国メーカより供給されており、代替品の入手は困難であった。 本年度の反応の観察には、光学顕微鏡を用いた。倍率は低いが、原料表面に水膜が形成されると同時に、おそらくは局所的な発熱を伴う激しい粒子移動を確認できた。これは、本反応が溶液反応でなく、水により加速する固相反応であることを示唆している。 反応の進行には、原料の固体酸塩基性が大きく影響していた。固体酸性および塩基性は指示薬を用いて相対的に評価した。反応の可否は、固体酸性と固体塩基性の差異と原料の融点に関連する傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特殊走査電子顕微鏡の重要部品の納品の遅れにより、反応観察実験を延期して実施する必要が生じた。これは、当初の想定に反し、国際流通の遅延により重要部品である電源およびCMOSカメラの入手が年度内に不可能となったためである。部品は電子顕微鏡にカスタマイズ して中国メーカより供給されており、代替品の入手は困難であった。 光学顕微鏡により基礎的なデータを評価したため、特殊走査電子顕微鏡の納入次第、この遅れは取り戻すことができる。
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今後の研究の推進方策 |
メカニズムの解明には、まず反応の観察が重要である。高倍率での観察が可能な走査型電子顕微鏡(SEM)の場合は真空状態での観測となるため反応に必須の水を加えることができない問題がある。そのため、含水試料の大気圧下の観察が可能な特殊SEMの納入ができ次第、代表的な化合物において、原料と原料の反応界面挙動に注目し評価する。 また、反応の途中経過の確認として、ラマン分光スペクトルやTG-DTA測定を行う。中間生成物をラマン分光法により調査することで、反応メカニズムを考察する。TG-DTA測定を行うことで、物質の水の吸湿・放出を質量・熱量変化を観察する。質量・熱量変化の詳細が判明すれば水和や脱離反応の有無がわかるため反応メカニズムの解明に役立つ。 原料の固体酸塩基性は合成の可否に大きく影響していると考えられる。これを検証するために、反応の結果を、原料および目的物の固体酸性・塩基性の観点から分類・比較し、 相関性があるか否かを検討する。固体酸性は指示薬を用いて相対的に評価するが、強い相関性が確認されたものに関しては、外部に委託し昇温脱離法などによっても確認する。 なお、本研究においては気温、湿度の管理が非常に重要である。そのため、一定の雰囲気内で実験を行うために雰囲気調整とその雰囲気内での実験操作が可能となるグローブボックスが必要である。特にガス種の変更や湿度の変更を行うためにガス置換が可能な真空グローブボックスの使用が妥当である。
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