研究課題/領域番号 |
22H01770
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
脇谷 尚樹 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (40251623)
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研究分担者 |
川口 昂彦 静岡大学, 工学部, 助教 (30776480)
坂元 尚紀 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (80451996)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | スピノーダル分解 / 二酸化バナジウム / 二酸化チタン / 薄膜 / スマートウィンドウ / シミュレーション |
研究実績の概要 |
令和5年度は、(a)TiO2(001)単結晶基板上への結晶性の高いTiO2-VO2薄膜の作製および、スピノーダル分解が生成するプロセスウィンドウの解明、(b)高温X線を用いたTiO2-VO2薄膜の相転移に伴う結晶構造変化の測定、(c)ガラス基板上へのVO2配向薄膜の結晶化をもたらすおよびバッファー層の探索、および(c)フェーズフィールド法によるTiO2-VO2薄膜のスピノーダル分解挙動の計算機シミュレーションを実施した。(a)では、これまでに報告例のある長時間成膜することによる、熱力学的に生じるスピノーダル分解の成膜条件に加えて、成膜時に磁場を印加することにより、短時間の成膜でもスピノーダル分解が生じるというこれまでに報告例のない新たな成膜条件が見出された。 (b)ではTiO2-VO2薄膜については固溶体薄膜の場合には温度を上昇させてもピークの生成や消滅が認められず、スピノーダル分解によって超格子構造を有数薄膜については温度を上昇させてもピークの生成や消滅が認めらえないものの、温度によってピーク位置が変化することと、金属絶縁体転移がブロードに生じることが明らかになった。(c)についてはガラス基板上にCdO薄膜を作製することで(001)配向のCdO薄膜を得ることができた。(d)については、フェーズフィールド法を用いることでルチル構造を有するTiO2-VO2に加えてTiO2-SnO2、TiO2-RuO2およびTiO2-GeO2がスピノーダル分解したときに生じる微構造のシミュレーションを行ったが、シミュレーションによって得られた微構造は報告されている微構造と極めて近く、シミュレーション結果の確からしさが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、(1)バッファー層の導入による、ガラス基板上へのc-軸配向スピノーダル分解TiO2-VO2薄膜の作製、(2)スピノーダル分解周期の制御によるTiO2-VO2薄膜における相転移温度の室温への低下とスマートウィンドウ特性の発現、(3)フェーズフィールド法による、ガラス基板上および異なる面方位の単結晶基板上に作製したTiO2-VO2薄膜のスピノーダル分解における微構造形成過程の統一的解明の3点であるが、(1)についてはCdOをバッファー層に用いることで(001)配向のCdOをガラス基板上に作製するところまでは実現した。ただ、このCdOバッファー層上にVO2薄膜の配向性は当初期待していた(001)配向ではなく、(110)配向となった。この原因は今後検討することとした。(2)の転移温度の低下とスマートウィンドウ特性発現についてはともに測定装置が完成しており、TiO2-VO2系に対してこれまで報告されてきた長時間の成膜(成膜時におけるアニール)の条件以外に、磁場印加をすることで短時間の成膜でもスピノーダル分解を実現可能な新しい成膜条件が見出された。(3)については、実際にTiO2-VO2薄膜のスピノーダル分解のシミュレーションにも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は(1)についてはガラス基板上に結晶性の高いTiO2-VO2薄膜をc軸配向させることが可能と考えているCdOバッファー層の上に作製したVO2薄膜がなぜ(110)配向となってしまうのか、その原因の解明と、(110)配向VO2薄膜における相転移温度の測定、および、CdO以外にガラス基板上で(001)配向を実現させる新たなバッファー層の探索を行う。このようなバッファー層の候補として、ZnOのような六方晶系の材料も検討する。(2)については、種々の配向性を有するVO2薄膜が基板やバッファー層から受けている歪をXRD測定から求めることで、歪の状態と相転移温度の関係を明らかにする。(3)について令和4年度と5年度の研究で目標としていた研究項目がほぼ達成されているため、令和6年度は特に実施をしない。
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