研究課題/領域番号 |
22H01779
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大瀧 倫卓 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (50223847)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 酸化物熱電変換材料 / チタン酸ストロンチウム / ナノコンポジット / 金属微粒子分散 / 溶離析出 / 選択還元 |
研究実績の概要 |
第2年度である2023年度は、Niを溶離金属としてあらかじめ固溶したNbドープSrTiO3(STNNO)を種々の還元条件で処理し、溶離析出するNiナノ粒子の量や粒径の制御を検討した。STNNOの還元処理における気相水素濃度を20%から100%の範囲で変化させたところ、導電率σはNiの固溶量と水素濃度が大きい方が高く、約8倍の違いがあったのに対し、ゼーベック係数Sはほとんど変化せず、σが増大するとSの絶対値は減少するという一般的な相反関係から逸脱しており、キャリア濃度以外の要因として溶離析出したNiナノ粒子のσへの寄与が示唆され、Sを減らさずにσを増大できる可能性が示された。 そこで、2価Niイオンから0価Ni金属への還元分率をXPSピークのNi2p3/2の面積比から算出し、4価Tiイオンから3価Tiイオンへの還元分率を格子定数の変化から算出した。4価Tiから3価Tiへの還元分率は、還元時のH2濃度や試料の多孔性にあまり依存せず、16から18%の狭い範囲に限られていた。つまりSTNOマトリックスの還元度に大きな差はなく、 これはSすなわちキャリア濃度がほぼ変化していないことと一致する。一方、2価Niから0価Niへの還元分率には、試料によって40倍以上の差があり、特に焼結密度の低いNi5%試料はNiの還元分率が最も大きく、Ni10%試料では0価Niの析出量が最も多い結果となった。これは、析出したNiナノ粒子が導電パスを形成して電子移動度が向上したため、Sを保持したままσが増大したと考えられる。還元条件の選択により、電子キャリアのドープとNi微粒子による導電パスの形成を独立に制御できる可能性があり、高性能酸化物熱電材料の設計指針として有望である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的とした検討項目 はおおむね順調に進行している。ただし、2023年度は入居している研究棟の大規模改修工事が行われ、年度当初に研究室を完全に他の建物に移転したため、1ヶ月以上のブランク期間が発生し、雑誌論文公表にはやや遅れが見られる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策には、現時点で当初計画から大きな変更点はない。
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