本研究は、主として酸化物ガラス、および、酸化物ガラスを熱処理して得られる結晶化ガラスを対象として、22Na線源を用いた陽電子寿命測定を駆使して材料中における空隙を定量化することにより、材料における中距離構造の空隙サイズと物性との相関を明らかにすることを目標とする。具体的には、(1)酸化物ガラスにおける陽電子寿命測定法の適応範囲を明らかにする。(2)ガラスにおける空隙サイズの変化と結晶化挙動との相関を定量的に議論する。そして、(3)陽電子寿命測定法により求めた空隙とガラスの物性(弾性特性や発光特性)との相関を解明する。これらによって、ガラスにおける評価方法の1つとして、陽電子寿命測定法の有用性を確立することが最終の目標である。 本年度は、研究代表者が作製した酸化物ガラスにおいて、アニール条件を変化させて得られた試料だけでなく、賦活剤として、微量元素の濃度を変化させて作製した酸化物ガラスに関する空隙の定量化を進めている。また、研究を進捗させるために、密度を高精度で測定できる乾式密度測定装置、及び、表面形状の評価が可能なマイクロスコープを購入して研究進捗に用いている。更に、自身が作製した試料のみならず、連携研究者から提供を受けた酸化物結晶、あるいは、市販に供されている多様なガラスにおいても、陽電子寿命測定を用いた空隙の評価をおこない、空隙の値と物性との相関に関するデータベース化、および、論文化を進めている。
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