研究実績の概要 |
【研究の目的】本研究は、主として酸化物ガラス、および、結晶化ガラスを対象として、陽電子寿命測定法を用いて空隙を定量化することにより、材料における中距離構造の空隙サイズと物性との相関を明らかにすることを目標とする。具体的には、(1)酸化物ガラスにおける陽電子寿命測定法の適応範囲を明らかにする。(2)ガラスにおける空隙サイズの変化と結晶化挙動との相関を定量的に議論する。そして、(3)陽電子寿命測定法により求めた空隙とガラスの物性(弾性特性や発光特性)との相関を解明する。これらによって、ガラスにおける評価方法の1つとして、陽電子寿命測定法の有用性を確立することが最終の目標である。 【2023年度研究実施計画】 2023年度は、陽電子寿命測定法を用いて、酸化物ガラスを熱処理して得られる結晶化ガラスについて、陽電子寿命測定により、結晶化挙動との相関を調査する。具体的には、溶融急冷法などにより作製した種々の酸化物ガラスを研究対象として、XRD,TEMなどにより求めた結晶子サイズ、超音波エコー法により求めた弾性率、あるいは、示差熱分析より求めた熱物性との相関を議論する。また、これらの試料について、微量の元素を添加したガラス試料を調製し、ドープした元素の濃度と算出される空隙サイズの相関について調査する。 【2023年度研究実施結果】 2023年度は、研究代表者が所属機関の出向業務に携わって研究に対するエフォートが非常に限られていたにも関わらず、これまでのデータを取りまとめて、3報の査読付き論文(全てオープンアクセス論文)を筆頭著者として執筆したことは評価に値すると考えている。限られたエフォートにおける主な実験内容は、作製した試料の陽電子消滅実験、及び、他の物性評価試験を行うにとどまったが、2024年度の論文化・成果発表に向けた多くのデータの蓄積が進んだ状況を作り出した。
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