研究課題/領域番号 |
22H01792
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
門井 浩太 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (40454029)
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研究分担者 |
濱崎 洋 中部大学, 工学部, 准教授 (30437579)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 金属脆化 / 割れ / 金属間化合物 / 異材接合 / 分離 / 資源循環 |
研究実績の概要 |
マルチマテリアル構造体のうち,自動車等の構造体を想定し,鉄鋼材料とAl合金の異材接合部を対象とした.昨年度から引続き,レーザ・アークハイプリッド接合による鉄鋼材料とAl合金の異材接合部に対し,高温加熱と脆弱層である金属間化合物(IMC)の生成挙動や破断強度の関係を調査した.特に接合に用いる溶加材のAl合金の化学組成に対しSiとMg量を変化させ,IMC層の生成や高温加熱によるIMC層の成長挙動,破断強度の関係を検討した.接合直後のIMC層厚さに対するSi含有量の顕著な影響は見られないものの,高温保持に伴うIMC層の厚さは,Si量が少ない方が増大しやすい傾向が認められた.一方,Mgを含有すると,極めて脆弱なIMC層が生成し,接合後に直ちに破断する傾向が認められた.Siを含有する溶加材を用い,高温保持をすると,Siなどの化学量論組成の異なるIMC層が複層構造となって生成することがわかった.接合部強度を調査したところ,IMC層が10μm付近を超えると破断強度が急激に減少し,破断亀裂が優先的に発生しやすいIMC層の傾向も認められた. これらの結果を基に,溶加材となるAl合金の化学組成を検討した.特に,接合が可能かつ高温加熱での脆化を促進,すなわち接合および分離に有効なIMC形成などを可能にする化学組成について,熱力学計算により検討を進めた.また,過去の文献等も参考に,MgとSiベースに種々の合金元素を変化させ,種々のIMC生成と化学組成の関係を見出した.この結果を基に,新たに構築した鋼板浸漬型のモデル実験により,IMCの生成.成長挙動の検討を進め,MgとSiをベースとし,合金元素の種類等がIMCの生成形態に対する影響が示唆された.また,マイクロビッカース圧子によって各IMC層の亀裂伝播の優位性を検討する手法を構築し,合金元素や熱処理時間がIMCの生成や脆弱性に対する影響を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は,レーザ・アークハイブリッド接合による鉄鋼材料とAl合金の異材接合部での,高温加熱と脆弱層生成挙動や破断強度の関係や,Al合金側の合金成分が脆化挙動に影響を実験的に見出すとともに,高温脆化挙動のCAE解析モデル化も進めた.一方で,接合が可能かつ高温加熱での脆化を促進する合金設計の導出には,数値解析と実験の繰り返しで検討を続けたが,最終的な化学組成を見出しきれておらず,やや遅れていると感じている.3年目の早い段階で結論を得るように一層注力して進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,接合から分離までを考慮した合金設計を早急に進める.最終的な化学組成を導出した後,高温保持過程でのIMCを層の生成・成長を伴う強度変化を検討するとともに,化学組成に応じた各種IMC層での変形・破壊の起点・進展の特定を行う.また,得られた化学組成の溶加材を作製し,これを用いてレーザ・アークハイブリッド接合を行い,接合体での高温加熱時のIMC生成・成長挙動ならびに強度特性を詳細に検討し,局所加熱による接合体の分離技術の構築に努める.
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