研究課題/領域番号 |
22H01800
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
阿多 誠介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (10709570)
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研究分担者 |
小野 巧 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (20637243)
陶 究 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (60333845)
加藤 悠人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (70635820)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 誘電率 / 誘電正接 / シクロオレフィンポリマー / 酸化アルミ / 複合材料 / 基板材料 / 6G / 移動通信システム |
研究実績の概要 |
本研究テーマにおいては、シクロオレフィンポリマーと、酸化アルミ(アルミナ)の複合材料を作成し、物性評価を行うための基本的なプロセスの確立を行った。本年度はまず、複数の種類のアルミナを入手し、これシクロオレフィンポリマーとを複合化するプロセスを開拓した。具体的にはバッチ式混練機を用いて、温度や回転数などを調整しながら混練条件の最適化を行った。フィラーの分散状態については走査型電子顕微鏡SEMによる観察像を元に、フィラーが適切に分散、分配されているかの確認を実施した。さくせいした試料は、金型を作成し、プレス成形によって適切な形状へと成形を行った、続いて、共振法による誘電率測定を行うための試料成形法を確立することで、誘電率の測定を行うためのプロセスを確立した。 最後に、実際に共振法を用いて最大120GHzのレンジでの誘電率測定を行い、物性評価を行うことで、アルミナの種類や添加量が、複合材料の誘電率や誘電正接に対してどのように影響するかの確認を行った。アルミナは種類や、形状、サイズなどが異なることから、これらの値を比較することで誘電率、誘電正接に対する影響因子を抽出することが可能となる。興味深い点として、アルミナの種類によって誘電率が大きく影響を受けることが確認された。具体的にはある種の作り方をされたアルミナでは誘電率が大きく上昇することを確認した。このような特徴は、今回目標とする低誘電率、低誘電正接の基盤材料の作成に対してはネガティブな効果となる。またアルミナのサイズも複合材料の誘電率に対して影響することを確認した。そのような成果を、論文誌にまとめることで公開を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、当初計画した通り、フィラーとして酸化アルミを採用し検討を進めている。これは、酸化アルミが多様な形状と高い強度を有していることから、複合化した際の形状変化がないと仮定することができるためである。また、酸化アルミは比較的良好な誘電特性を有していることから採用した。酸化アルミは研究協力者などからの入手、および市販品の購入により調達を行い、必要な量、種類の酸化アルミの調達ができた。ポリマーマトリックスであるシクロオレフィンについては、最初に超臨界CO2による発泡実験を実施した。これはシクロオレフィンがそもそも発泡するのかということを確認する必要があるためである。初期検討の結果、シクロオレフィンが発泡することを確認し、また最適な発泡条件の最適化を実施した。 続いてシクロオレフィンポリマーに関して、アルミナの種類、添加量を変えて複合材料を作成した。混練条件などについてはSEMを取りながら最適化を実施した。作成した試料をディスク状に成形し、共振法により誘電率、および誘電正接の測定を行った。共振法による誘電率測定のレンジはおおよそ0-120GHzとした。その結果、アルミナの種類によって大きく誘電正接が影響を受けることを確認した。また、アルミナのサイズが複合体の誘電率、誘電正接に対して影響を与えることも明らかになった。特に、1マイクロメートル以下で誘電率や誘電正接に対してポジティブな効果が確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今回の検討により、充填量が等しいシクロオレフィン、アルミナ複合材料において誘電率、誘電正接が変化することが確認された。そのため、まずはアルミナの種類によって誘電率が大きく変動する原因について検討を行う必要がある。まず、粒子径に注目した場合、おおよそ10マイクロメートルを境にして誘電率についての挙動が変化することを確認した。 また、特定のアルミナについては、誘電率、誘電正接が極端に上昇することを確認した。過去の研究においては特に、水分の影響が懸念されるため、複合化の前にフィラーの水分を除去するプロセスを導入することを検討する。また、実際に作成した複合材料について、超臨界CO2を用いた多孔質化を行うことで、実際にどれくらい誘電率や誘電正接が低下するかの確認を行う。 上記の内容を確認した後、多孔質体の作成に取り掛かる予定である。多孔質体の作成については超臨界CO2による発泡を予定している。すでに初期の検討により、COPが多孔質化することは確認済みである。今後は複合材料化した際の特性についても多孔質化の影響を調査する予定である。通常、フィラーを含む系では粘度が上昇するため、発泡温度などの最適化が必要となる。これらについても来年度に実施する予定である。
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