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2023 年度 実績報告書

極低温用形状記憶合金の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22H01802
配分区分補助金
研究機関東北大学

研究代表者

貝沼 亮介  東北大学, 工学研究科, 教授 (20202004)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード極低温用形状記憶合金 / Cu-Al-Mn / 変態ヒステリシス / エントロピー変化 / 異常粒成長
研究実績の概要

水素社会や宇宙開発等の分野においては、150Kを下回る温度域における冷却技術やアクチュエータ技術が必要とされており、形状記憶合金は魅力的である。しかし、実用合金では利用が難しく低温の応用例が殆ど無い。Cu-Al-Mn合金は、極低温域での弾性熱量効果や形状記憶効果が期待できるものの、未だに低温弾性熱量効果や低温形状記憶効果は実証されていない。そこで、本研究では、150K以下に変態温度を有するCu-Al基形状記憶合金の変態温度やエントロピー変化の組成依存性を調査し、低温での断熱温度変化や形状記憶特性の評価を行う。
今までの研究により以下の点が明らかとなった。
1.合金設計と単結晶化:マルテンサイト変態温度を低温域にもつ合金組成を決定した。また、マルテンサイト変態温度を低温域にもつ合金組成においてもサイクル熱処理法を利用して異常粒成長させることが可能であることを確認した。さらに集合組織も調査し、加工熱処理条件によってはGoss方位(110)<001>集合組織が部分的に得られることを見出した。
2. 低温形状記憶効果の調査: CuAlMn単結晶について低温用引張試験機により4.2~200Kの温度範囲で一定荷重下での相変態による変位の変化を測定し、変態温度と変態歪を測定した。
3.弾性熱量効果の調査: 4.2~200Kの範囲で温度を変えながら超弾性試験を行い、クラウジウス・クラペイロンの式を用いてΔSを評価した。その結果、約50K以上ではほぼ一定で比較的大きなΔSを示すことが判明した。また、極低温用機械試験機に熱電対を接触させ断熱温度変化の直接測定を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定していた研究内容について、ほぼ計画通りに進んでいるから。

今後の研究の推進方策

最終年度は、以下の4点について研究を推進する。
1. これまでに、サイクル熱処理法を利用してマルテンサイト変態温度を低温域にもつ合金組成において異常粒成長させることが可能であることを確認した。集合組織も調査し、加工熱処理条件によってはGoss方位(110)<001>集合組織が部分的に得られることを見出した。しかし、組織全体を強いGoss方位にすることには至っておらず、最終年度も引き続き集合組織制御の研究を行う。また、1方向凝固炉の利用も引き続き検討する。
2. 2023年度は、CuAlMn単結晶について低温用引張試験機により4.2~200Kの温度範囲で一定荷重下での相変態による変位の変化を測定し、変態温度と変態歪を測定した。低温での繰り返し特性評価はやり残したので、最終年度はこれらについて明確にする予定である。
3.2023年度は、4.2~200Kの範囲で温度を変えながら超弾性試験を行い、クラウジウス・クラペイロンの式を用いてΔSを評価した。その結果、ΔSは約50K以上ではほぼ一定で比較的大きいことが判明した。また、極低温用機械試験機に熱電対を接触させ断熱温度変化の直接測定を行った。その結果、約30Kでも除荷による吸熱反応が検出された。最終年度は、ΔSから得られた結果との不一致の原因について考察を進める。
4.比較的導電率の高いCuZnAl系形状記憶合金を中心に過去の超弾性合金を調査しつつ低温超弾性の得られる適正な組成を探索する。また、得られた合金について上記1~3に示された研究を行い、高導電性も兼ね備えた新たな極低温用超弾性合金の候補を提案する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Revisiting the Phase Equilibria in the Cu-Zn Binary System2023

    • 著者名/発表者名
      Lee Hyoungrok、Lee Inho、Xu Xiao、Omori Toshihiro、Kainuma Ryosuke
    • 雑誌名

      Journal of Phase Equilibria and Diffusion

      巻: n/a ページ: n/a

    • DOI

      10.1007/s11669-023-01061-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Viscosity of superelasticity: A comprehensive interpretation of nonreciprocal isothermal dynamics, kinetic arrest, and nonergodic anelastic strain based on thermal activation of martensitic transformations2023

    • 著者名/発表者名
      Niitsu K.、Yano Y.、Kainuma R.、Inui H.
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 108 ページ: 134103(14p)

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.108.134103

    • 査読あり
  • [学会発表] 単結晶Cu-Al-Mn合金における超弾性と塑性変形挙動の結晶方位依存性2023

    • 著者名/発表者名
      喜瀬純男, 荒木慶一, 大森俊洋, 貝沼亮介
    • 学会等名
      (公社)日本金属学会2024年春期(第174回)講演大会
  • [学会発表] Cu-Al-Mn 合金単結晶におけるサブグレインが超弾性疲労特性に与える影響2023

    • 著者名/発表者名
      谷川由果, 許勝, 大森俊洋, 貝沼亮介
    • 学会等名
      (公社)日本金属学会2023年秋期(第173回)講演大会
  • [学会発表] Cu-Al-Mn 合金の応力下におけるマルテンサイト変態と形状記憶効果に及ぼすベイナイトの影響2023

    • 著者名/発表者名
      長谷川凌太, 大森俊洋, 貝沼亮介
    • 学会等名
      (公社)日本金属学会2023年秋期(第173回)講演大会
  • [学会発表] Cu-Al-Mn 合金における極低温弾性熱量効果の直接測定2023

    • 著者名/発表者名
      許勝,ソウウキン, 伊東達矢, 川崎卓郎, ハルヨ ステファヌス, ゴン ウー, 許皛, 大森俊洋, 貝沼亮介
    • 学会等名
      (公社)日本金属学会2023年秋期(第173回)講演大会
  • [備考] 東北大学大学院工学研究科マテリアル開発系金属フロンティア工学専攻 貝沼・大森・許研究室

    • URL

      https://www.material.tohoku.ac.jp/~seigyo/

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公開日: 2024-12-25  

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