研究課題/領域番号 |
22H01810
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
馬渕 守 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (00358061)
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研究分担者 |
袴田 昌高 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (30462849)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 細胞 / 機械的刺激 |
研究実績の概要 |
ナノポーラス (np) 金アクチュエータを用いた実験により、カドヘリンを介したjuxtacrineシグナル伝達が、集団細胞の細胞配向に重要な役割を果たしていることを示した。0.15%の小さな周期的ひずみの機械的刺激を細胞に加えると、Rho/ROCK-MAPK-YAPの細胞内シグナル伝達により、細胞シート内の細胞は特定の方向に配向した。特に注目すべきこととして、np金アクチュエータから7ミリメートル離れており、機械的刺激がアクチュエータから直接負荷されていないプラスチックディッシュ上の細胞にも、カドヘリンを介したjuxtacrineシグナルによって、細胞配向のためのシグナルが届いていることがわかった。遺伝子発現分析の結果、関連する遺伝子のクラスターは3つあったが、細胞内シグナルはインテグリンとカドヘリンのクロストーク・シグナルと、カドヘリンを介したシグナルの2つだけであった。 また、集団的な細胞配向は、プラスチックディッシュ上だけでなく、水平から傾斜をつけた斜面基板上、さらにその基板から連続的に続く平面基板上でも起こった。しかし、プラスチックディッシュ上での集団的細胞配向の細胞内シグナル伝達は、斜面上と平面上とで異なっていた。本研究は、弱い機械的刺激であっても、力の伝達そのものによるのではなく、juxtacrineシグナルによって長距離に伝達できることを示唆している。長距離juxtacrineシグナルは、様々な生命現象において重要な役割を果たしている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定にあった牽引力顕微法 (TFM法) と蛍光共鳴エネルギー移動法 (FRET法) により、ヒト線維芽細胞シートが受ける応力の分布状態を定量的に調べる、という実施項目は先送りしたが、それをせずともカドヘリンを介したjuxtacrineシグナルの重要性を指摘できたことから、総合的に見て順調である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、機械的刺激を与えた細胞シートやオルガノイドを用い、種々の細胞集団を創製してその構造と機能を調査する。
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