研究課題/領域番号 |
22H01820
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
松永 哲也 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (30595905)
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研究分担者 |
片山 郁文 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (80432532)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | チタン / 固溶強化 / 超高速パルスレーザー分光 / 力学的特性 |
研究実績の概要 |
本研究は、金属材料の力学的特性と電子状態との間の相関関係を明らかにし、電子状態に立脚した新しい金属材料強度学の構築を目標にしている。本年度は、この相関関係が存在するか明らかにするため、純チタンとそのモデル合金を使用して、超高速パルスレーザー分光法により電子状態の計測を試みた。特に注目したのは、チタンの実用化にとって重要な強化機構の一つである固溶強化であり、その強化量の結晶方位依存性が生じる原因を電子状態変化から考察できるか明らかにすることとした。そこで、モデル合金として実用チタン合金に添加されるアルミニウムを0-5 at%添加したチタンとアルミニウムの2元系モデル合金を作製し、電子状態の計測を実施した。レーザーの照射はチタンの柱面方向から実施した。その結果、すべての試料の電子状態の計測に成功し、さらに、アルミニウム添加量を増加させることで電子状態の形状変化を計測することにも成功した。特に、アルミニウムを添加することで、純チタンでは弱かった底面に並行方向の電子状態が顕在化することを明らかにした。これは、チタンにアルミニウムを添加することで底面すべり系が相対的に活動しやすくなる現象との相関関係が伺える。また、電子状態計測を実施した際、得られた分光データより、光の強度はアルミニウム添加量が増加するほど低下することを明らかにした。これは、電子密度の低下を示した可能性があり、固溶強化によってチタンの強度が上昇する場合、電子密度が低下している可能性が浮上した。以上の結果より、金属材料の力学的特性と電子状態との間には相関関係が存在する可能性が高いことが分かってきた。また、これらの結果は、金属材料の固溶状態を定量的に評価する指針になる可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属材料の力学的特性と電子状態との間の相関関係が存在することを示すことを目的としたチタンとチタン・アルミニウム2元系モデル合金を対象にした電子状態計測を実施した。この結果、固溶元素であるアルミニウムの存在が、母相チタンの電子状態を大きく変化させることを示すことに成功した。さらに、この電子状態変化により、底面すべり系が相対的に活動しやすくなる力学的特性変化を示すことが可能であることを示すことから、上記の目的を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
チタンとアルミニウムの2元系モデル合金において観察した力学的特性と電子状態との間の相関関係をより一般化することを試みる。そこで、アルミニウム以外の固溶元素やHCP構造以外の金属においても上記の相関関係が成立するか調査することとする。チタンの場合は、スズの効果に注目する。スズは実用チタン合金によく添加される元素であり、その効果とともに、実用合金のような多元素添加の効果も視野に入れた基礎研究を実施する。さらに、HCP金属以外の金属に関しては、FCC金属への展開を視野に、超高速パルスレーザー分光法が同構造を有する金属にも適応可能であるか調査する。
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