研究課題/領域番号 |
22H01831
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
土谷 博昭 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (50432513)
|
研究分担者 |
藤本 愼司 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (70199371)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 陽極酸化 / チタン合金 / 貴金属 / ナノ粒子 / 構造解析 / ナノチューブ / 自己規則化 |
研究実績の概要 |
Ti合金の陽極酸化過程でTi合金基板/ナノチューブ層界面に複数の添加元素が濃縮するのならば貴金属元素同士に限らず、それらの添加元素の合金化は可能か」、「添加元素の合金化現象と添加元素からなるナノ粒子形成・担持の機序はTiO2ナノチューブ形成機構から理解できるか」、さらに「ナノ粒子形成・担持は陽極酸化電圧によって制御できるか」という、これまでのアノード酸化研究で得られた知見に基づいて立案した研究における課題を解明して、「組成および位置が制御された貴金属元素と遷移金属元素からなる合金ナノ粒子を担持したTiO2ナノチューブ層の創成」と「形成したナノチューブ層のエネルギーデバイスへの展開に向けた基礎検討」を目的とする。本年度は合金ナノ粒子形成に及ぼす電気化学条件の検討を行った。作製したチタン合金の陽極酸化をフッ化物及び水を添加したエチレングリコール電解液中で実施した。広範な溶液条件で検討した結果、フッ化物濃度よりも水添加量が陽極酸化挙動に影響を及ぼし、最適量よりも水が多い場合には貴金属含有Ti合金においてナノチューブ状酸化被膜は形成しないことが分かった。最適水分量で行った陽極酸化ではナノチューブの形成とともにナノ粒子の担持は確認できたが、ナノチューブ断面よりも表面への形成が多く見られた。またナノチューブ層形成には貴金属元素の濃度が高い場合にも規則配列したナノチューブ状酸化被膜は形成しないことが分かった。更にエネルギーデバイスへの展開に向けた基礎的検討を行うための予備検討として、酸化チタンの光電流過渡応答の測定および過渡応答の計算モデルに関する検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでは数種類のTi合金を作製して、その陽極酸化挙動、被膜形成・成長挙動ならびにナノ粒子形成・担持挙動を検討している。添加元素の合金化およびナノ粒子化現象の機序の解明をするためには、より広範にTi合金を作製し、研究を行っていく必要がある。これまでの検討により規則配列したTiO2ナノチューブ層を形成するためには、貴金属添加量を低く抑える必要があることが明らかとなったため、アーク溶解法でも単相合金を形成できる可能性があることがわかった。ただし、合金作製前に状態図等で添加元素の種類および添加量をある程度、限定して合金の作製を行っていく。またエネルギーデバイスへの展開のひとつとして、酸化チタンへの光照射による水素生成を検討する。これは光電気化学反応であるため、その簡便な評価法として光電流測定を行っていくことを予定しているが、これまでは酸化チタンの光電流測定時に観測される過渡応答に着目した計測とそのモデル化に関する検討を重ねている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに得た知見に基づいて、貴金属元素や遷移元素などを適量、共添加した様々なTi合金を作製して、その組織・構造解析を行うとともに、Ti合金の陽極酸化挙動と形成した陽極酸化被膜の形態・構造を酸化被膜とTi合金基板界面に注目して評価することで、貴金属元素を共添加したTi合金上へのTiO2ナノチューブ形成時に発現した添加元素の合金化およびナノ粒子化の機序を解明することを目的として研究を継続する。具体的にはこれまでに得られた成果に基づいて、スパッタリング法およびアーク溶解法を用い合金金を作製する。貴金属元素はこれまでに得られた知見に基づき低濃度にし、遷移元素の濃度を変えた合金を作製する。合金組成によってはアーク溶解法では単相試料が得られないこともあると想定されるので、必要に応じて熱処理を実施する。熱処理の効果は元素分布や相構成から評価する。その後、作製したTi合金を様々な電圧で陽極酸化する。添加元素の濃縮にナノチューブ形成・成長挙動は関与するのかを明らかにするために、Ti合金上にナノチューブ状被膜および平らな被膜を形成する必要がある。そのため、ナノチューブ状酸化被膜の形成にはフッ化物含有電解液を、平らな酸化被膜形成にはフッ化物非含有電解液を使用する。被膜成長過程を陽極酸化中の電流挙動と電解液中に溶出したイオン定量分析から検討を加える。また添加元素の合金化およびナノ粒子化の機序の解明には酸化被膜/基板界面の局所観察・分析を行う手法の確立に引き続き取り組む。さらに本年度に取り組んだことを発展させ、酸化被膜のエネルギーデバイスへの展開に向けた基礎的検討を行うためのシステムを構築し、性能の検証を行っていく。
|