研究課題/領域番号 |
22H01842
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
本山 雄一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (60715019)
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研究分担者 |
岡根 利光 ものつくり大学, 技能工芸学部, 教授 (80251362)
徳永 仁史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (90357559)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 半凝固引張試験 / 凝固組織 / 青銅 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は固液共存温度域における合金の力学特性の支配因子を明らかにし、得られた知見から固相状態のみならず、凝固中の固液2相状態での力学挙動をも統一的に表現可能な構成式を開発することである。今年度は、昨年度に引き続き、高周波加熱方式の半凝固引張試験装置を用いて青銅(Cu-9.5%Sn)を対象とし、固液共存温度域において引張試験を実施した。昨年度の半凝固引張試験の結果に加え、取得データを更に増やすことにより、凝固中のCu-9.5%Sn合金が強度を生じ始める温度すなわち、Zero Strength Temperature (ZST)の取得が出来た。実験で得られた固液共存温度域における引張強さ-温度のグラフから、Cu-9.5%Sn合金のZSTを854 ℃(固相率は0.62)と決定することが出来た。また、今回評価しているCu-Sn系の青銅と、従来報告のあるCu-Zn系の黄銅との固液共存温度域における引張強さ-温度の関係の比較も行った。比較の結果から、両合金のZSTに対応する固相率はおおよそ0.6となりほぼ同じ固相率となったが、ZST以下の温度における強度の増加挙動に差がみられ、同じ固相率においては青銅の方が高い引張強さを示すことが明らかになった。この結果から、粥状凝固形態を示す青銅と、表皮形成型の凝固形態を示す黄銅とでは固液共存温度域の強度発生挙動に差があり、凝固形態の違いがその原因となっている可能性がある。また、固液共存温度域における力学挙動をシミュレーションする上で必要となる、凝固シミュレーションについても、多結晶凝固組織を再現可能なセルオートマトン(CA)シミュレーションの開発を行った。熱力学計算により求めた物性値を用いてシミュレーションを実施し、過冷した溶湯から均質・非均質核が生成、結晶が成長し、多結晶組織になる一連の凝固過程についてシミュレーションを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
青銅の半凝固引張試験については、予定していた試験条件を終了し、考察を行う上で十分な実験結果を得ることが出来た。また、セルオートマトン法による凝固組織シミュレーションの開発も行い、固液共存域における合金の力学挙動を検討する上で必要となる、多結晶凝固組織についても計算が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はセルオートマトン法で再現した凝固組織を利用して、ミクロスケールでの応力解析を行い、これまでに得られた実験と解析との比較・検討する。検討の結果から、固液共存温度域の強度の支配因子を明らかにし、固液共存温度域の力学挙動を再現可能な構成式の提案を行う。
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