研究課題/領域番号 |
22H01848
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平出 翔太郎 京都大学, 工学研究科, 助教 (60853207)
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研究分担者 |
宮原 稔 京都大学, 工学研究科, 教授 (60200200) [辞退]
渡邉 哲 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80402957)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ソフト多孔性錯体 / ゲート吸着 / 速度論 / 吸着速度解析 |
研究実績の概要 |
ソフト多孔性錯体は,吸着によって誘起される結晶構造転移(ゲート吸着)を示す。この構造の変形を伴った吸着過程は,直感的には遅いように思われるが,従来吸着剤と遜色ない,ともすれば速い吸着応答性を示すソフト多孔性錯体の存在が確認されている。この迅速吸着特性の起源解明は工学的に重要であるが,細孔内拡散を律速とする現行の吸着工学では,吸着と構造変形が不可分であり,かつ,吸着分子が存在して初めて細孔構造を維持可能なソフト多孔性錯体の吸着速度を議論することは不可能である。本研究は種々のソフト多孔性錯体の吸着緩和過程について解析を行うことで,ゲート吸着の速度論の体系化を目指すものである。 本年度は,本研究において主要な装置となる水晶振動子マイクロバランス法に基づく吸着速度解析装置の開発をメインに行った。価格や温度制御の上下限,サンプルセルの容積の観点から,当初予定した特殊水晶振動子センサーではなく,汎用的な水晶振動子センサーへと切り替え,真空チャンバーと水晶振動子を保持する回路部分をゼロから設計した。また,納入された装置を制御するソフトウェアも完成し,測定が可能な状態へと持っていくことができた。 また,SPring-8でも年4回程度ビームタイムを確保し,3種類のソフト多孔性錯体についてデータの収集を行った。これらのデータを解析したところ,ソフト多孔性錯体ごとに構造転移率の時間発展が異なる傾向が見て取れた。これは本研究課題のコンセプトを裏付ける結果であり,今後さらなる詳細検討が望まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
水晶振動子マイクロバランス法に基づく吸着速度解析装置の開発は,まったくゼロからの設計となることや昨今の部品調達の難化傾向を加味して,1.5年を計画していた。しかし,真空熱制御に長け,オリジナル装置の開発に積極的な良い業者と早期に巡り合うことができ,2月までにすべての装置を揃えることができた。また,当研究室で開発した制御ソフト開発ライブラリを活用することでわずか数日で制御ソフトを完成させることに成功し,最も不安であった水晶振動子の発振についても問題なく確認することができた。結果,予定よりも半年早く測定可能な状態へと到達できた。よって,当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
まずは開発した水晶振動子マイクロバランス法に基づく吸着速度解析装置の妥当性検証を実施する。具体的には,構造柔軟性を示さないzeolite 13Xや,放射光施設SPring-8にて十分にデータを蓄積しているソフト多孔性錯体三種に対して測定を行い,妥当な結果が得られるかどうかを確認する。 SPring-8での測定に関しては,新たに数種類のソフト多孔性錯体を試すとともに,吸着だけではなく脱着過程の測定も行う。 また,得られたデータを元に速度過程の解析を行い,骨格構造と得られる式形との相関を見出す。 加えて,量子化学計算結果に対する機械学習で得られたポテンシャルセットを用いた分子シミュレーションにより,吸着による構造変形のダイナミクスを直接計算することを試みる。
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