研究課題/領域番号 |
22H01855
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
官 国清 弘前大学, 地域戦略研究所, 教授 (90573618)
|
研究分担者 |
阿布 里提 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70565374)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | CO2還元触媒 / 金属層状複水酸化物触媒 / エチレン / ギ酸 / 電解還元 / 電解酸化 / バイオマス / フランジカルボン酸 |
研究実績の概要 |
再生可能エネルギーを用いて電気化学的に二酸化炭素(CO2)を有価物へと変換するとき、陰極の触媒性能を高めてCO2の還元速度を向上させると同時に、陽極の酸化反応を上手く組み合わせるようにすれば、電解セルの両電極で同時に高付加価値化学品を高効率的に合成できる。令和4年度では、新規CuベースCO2還元触媒を担持したガス拡散陰極及び金属層状複水酸化物(LDH)触媒担持した多孔質陽極の調製を行った。得られたCu-Ceベース陰極触媒を用いてCO2からエチレン(C2H4)、メタン(CH4)、一酸化炭素(CO)及びギ酸(HCOOH)への変換の総ファラデー効率が最大33%に達成されたが、エチレン(C2H4)への選択性は低かった。また、金属有機フレームワーク前駆体による合成した新規InBiOx触媒も得られ、CO2からギ酸への変換のファラデー効率は最大97.6%に達したほか、120時間以上の安定性が示した。一方、CuCo-、CuZn-、CoZn-及びCuCoZn-ベースの層状複水酸化物陽極触媒を調製し、バイオマス由来ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)をバイオプラスチック原料のフランジカルボン酸(FDCA)へ電気化学的に変換した結果、最大100%のHMF転換率、95.8%のFDCA収率及び91.6%のFDCAへの変換ファラデー効率を達成した。また、市販の多孔質プロトン伝導性固体電解質膜及びバイポーライオン交換膜をスクリーニングしてみた結果、多孔質プロトン伝導性固体電解質高分子膜1種類及びバイポーライオン交換膜1種類を見つけた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画のとおり、新規CuベースCO2還元触媒及び金属層状複水酸化物(LDH)触媒を調製した。得られたCO2還元触媒はC2+製品への高選択性はまだ実現していないが、その原因は分析して触媒の改良を行っている。また、新規InBiOx触媒も得られ、CO2からギ酸への変換のファラデー効率は最大97.6%に達したほか、120時間以上の安定性が示した。一方、バイオマス由来ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)をバイオプラスチック原料のフランジカルボン酸(FDCA)へ電気化学的に変換のため、高性能の金属層状複水酸化物(LDH)触媒を得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)前年度で開発したCO2還元用Cuベース電極触媒及びバイオマス由来ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)をフランジカルボン酸(FDCA)へ酸化するNiCoベース層状複水酸化物(NiCo-LDH)触媒を改良し、最適な電極触媒を得る。また、密度汎関数理論(DFT)計算と組み合わせ、電極触媒反応機構を解明する。特に、C2+化合物へ変換するためのC-C結合の形成に係る触媒表面に吸着された中間体特性及び複数のプロトンが支援された電子移動ステップを明らかにする。また、HMF分子とOH-のLDH触媒表面の相互作用、特定の反応中間体の生成及び触媒中の求電子酸素種などとの関係を解明する。特に、HMFとFDCA分子の触媒表面との結合強度と触媒のナノ構造及びpHとの関係を明らかにする。また、CO2還元とHMF酸化触媒の劣化機構を解明し、高電流密度下の触媒安定化手法を検討する。さらに、NiCoベースLDHを異原子で修飾して、触媒中の求電子格子酸素または求電子吸着酸素サイトを調整し、酸化速度を向上させる。また、電極表面でのHMFとOH-の吸着バランスを調整し、低アルカリ性の環境中でもHMF酸化速度を上げて長時間の安定性を維持できるかを明らかにする。 (2)最適な両電極触媒とフロー式セールを用いて、陰極でのCO2のC2+製品への還元と陽極でのHMFのFDCAへの酸化実験を行う。 (3)プロトンバッファリング用多孔質プロトン伝導性固体電解質膜とポーライオン交換膜を備える電解セルの構築を続き、予想の効果に達成できるのかを検証する。
|