研究課題/領域番号 |
22H01865
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
谷池 俊明 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (50447687)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 構造探索 / 遺伝的アルゴリズム / Ziegler-Natta触媒 / 機械学習ポテンシャル / 構造分布 |
研究実績の概要 |
実用的な固体触媒の構造や電子状態はナノスケールで不均一であるため、従来の単一的な構造モデルではその本質を掴みきれない。本研究の目的は、遺伝的アルゴリズムによる広域探索とDFT計算による局所最適化を組み合わせた独自の非経験的構造探索法を駆使し、Ziegler-Natta触媒ナノ構造の分布、及び、これがもたらすポリマーの一次構造分布の起源を解明することである。当該年度は、以下の2項目を実施した。 1) ドナーは触媒調製時にキャッピング剤として働きMgCl2ナノプレートの形成に作用するだけでなく、表面上でTiCl4と共吸着し活性種の立体特異性やポリマーの分子量分布に決定的な影響を与える。開発済みの二元系(TiCl4/MgCl2)用構造決定プログラムを改良し、実触媒の三元系(TiCl4/ドナー/MgCl2)を対象とした構造探索を初めて実現した。具体的には、MgCl2表面上の吸着サイトとドナーの吸着構造を紐づけたテンプレートセットを作成し、これを参照することで三元系の構造生成を可能にした。 2) 非経験的構造探索法の欠点として、分子サイズや吸着パターンの増大が遺伝的アルゴリズムの局所解への早期収束と計算コストの飛躍的な増加をもたらす点が挙げられる。その解決策として、構造探索の過程で得られた準安定構造をデータベース化し、データベースからの移住に基づく分散型遺伝的アルゴリズムを実装した。早期収束を回避することで実験的に整合したサイズのTiCl4/MgCl2の構造決定を初めて実現した。また、TiCl4/MgCl2に対する機械学習ポテンシャル(HDNNP)の実装にも成功し、DFTをHDNNPに置き換えることで構造探索の飛躍的な高速化を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度の当初目標は、1)実Ziegler-Natta触媒の三元系(TiCl4/ドナー/MgCl2)を対象とした構造探索の実装と、2)その実践による分布評価のための準安定構造の蓄積であった。目標1については当初の予定通り完遂した。一方、目標2を実践する中で、遺伝的アルゴリズムの局所解への早期収束と計算コストの飛躍的な増加が新たな課題として浮かび上がった。そこで計画を修正し、解決策としての分散型遺伝的アルゴリズムの開発と機械学習ポテンシャルの実装を追加で実施した。これらによって計算効率が改善され、結果として構造蓄積が想定上に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、三元系(TiCl4/ドナー/MgCl2)に対しても機械学習ポテンシャルの構築を行う。その後は、当初計画通り準安定構造の蓄積を進め、活性点構造の状態の熱力学的分布を導出する。重合シミュレーション、実触媒の分光分析にも着手する。
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