研究課題/領域番号 |
22H01868
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
津野地 直 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (40758166)
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研究分担者 |
清水 研一 北海道大学, 触媒科学研究所, 教授 (60324000)
池田 拓史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 上級主任研究員 (60371019)
日吉 範人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (50415733)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ゼオライト / ゼオライトナノシート / ヒドロキシ基含有鋳型 / 触媒 / 吸着材 / 多孔質材料 / 細孔材料 / ナノシート |
研究実績の概要 |
ゼオライトは優秀な工業触媒・吸着材であるが、その小さなミクロ細孔は反応・吸着対象とする物質の大きさに制限をかけてしまう。2 nm程度の厚みを持つゼオライトナノシートは現状最も薄い(粒子径の小さな)ゼオライトであり、この物質の拡散制限による問題を解決することで、従来のゼオライトと比較して格段に高い材料性能やナノシート構造ならではの新規用途を開拓している。一方、ゼオライトはその多種多様な骨格構造を反映して様々な触媒・吸着能を発揮できるにもかかわらず、このナノシート型のゼオライトに関しては、その合成報告が特定の骨格のみに限られている。本研究の目的は、ヒドロキシ基含有鋳型によって、どのような骨格構造・組成・細孔構造・触媒特性を持ったゼオライトナノシート触媒が開発可能かを明らかにすることである。 当該年度においては、ヒドロキシ基を有し異なる分子構造を持つ5種の鋳型を用いて、その有機鋳型の構造が得られるゼオライトの結晶相に与える影響に関して詳細に調査を行った。合成検討の結果、用いる有機鋳型のアルキル鎖の長さおよびヒドロキシ基が結合している個所およびアルカリ条件においてヒドロキシ基を結果的に形成する有機官能基構造が得られるゼオライトナノシートの結晶性、細孔特性、粒子形態、組成および骨格構造に大きな影響を与えていることが判明した。検討を行った5種の有機鋳型それぞれに対して、ナノシート構造やナノ粒子構造を特徴とし、異なる骨格構造を持ったゼオライトが得られた。また、得られたゼオライトはその小さな粒子径に依存した高い外表面積値を示すことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画予定であった有機鋳型を用いた合成検討はおおむね終了し、それぞれの有機鋳型位において、ゼオライトナノシート、ゼオライトナノ粒子の合成に成功しているため。
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今後の研究の推進方策 |
(A)ゼオライトの骨格構造は、合成中に有機鋳型を取り囲むように集合したシリケート中間体が縮合することで形成され、この集合状態と形成される骨格構造には鋳型の立体的な分子構造が関与する。そこで、ヒドロキシ基を含有した鋳型に関して、アルキル基の長さ、ヒドロキシ基の個数、ヒドロキシ基の結合位置を変更し、様々な骨格構造を持つゼオライトナノシートの合成を検討する。本年度は、昨年度見いだされた合成結果から検討する合成系を絞り込み、得られたゼオライトナノシートの更なる合成条件最適化および形成過程の調査を行う。 (B)得られたゼオライトナノシートの結晶性、巨視的な粒子形態、骨格元素の化学状態をXRD、SEM、各種固体NMRによって確認し、Arガス吸着とコンピューターシミュレーション(GCMC)法を組み合わせることで、ゼオライト骨格内およびゼオライトナノシート間に存在する大きさの異なる細孔を評価する。初期段階で得られたゼオライトナノシートの局所的な秩序構造およびシート内の構造解析に関しても、二次元NMRや高分解能TEM解析を用い、並行して検討する。本年度は、現在得られている複数種のゼオライトナノシートに対して、多角的な構造解析を行い、それぞれのナノシートの構造的特徴を明らかにする。 (C)触媒の外表面と外表面近傍の固体酸性質評価のために、トリイソプロピルベンゼン等のかさ高い基質を用いたテスト反応を行う。さらに、得られたゼオライトナノシートの基礎物性情報、その場観察、理論計算にて得られたデータを参照し、本材料特有の触媒特性を見出すための反応系を探索する。本年度は、すでに得られている、複数種のゼオライトナノシートに対して上記反応を適用し、将来的な応用反応に向けた基礎知見を得る。
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