研究課題/領域番号 |
22H01872
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
天尾 豊 大阪公立大学, 人工光合成研究センター, 教授 (80300961)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 二酸化炭素利用 / 複合触媒系 / 生分解性高分子 / 環境低負荷型材料 / グリーン触媒 |
研究実績の概要 |
微生物によって完全に消費され二酸化炭素、メタン、水あるいはバイオマスなど自然的副産物のみを生じる生分解性高分子は、環境低負荷型材 料として注目を浴びている。生分解性高分子の原料となるモノマーを光エネルギーと二酸化炭素から合成する方法が確立できれば、再生可能エ ネルギーの利用と二酸化炭素の有効利用・削減にも効果を発揮する新たな手法になりうる。本提案では、天然光合成の二酸化炭素利用技術を手本として機能性光触媒・金属微粒子触媒・生体触媒からなる光レドックス系を構築し、二酸化炭素と最も簡単なケトン化合物であるアセトンを原料とし、可視光エネルギーによって生分解性高分子のモノマーとなるヒドロキシ酪酸の合成を目的としたグリーン触媒分野に貢献することを目的とする。2022年度は、当初の計画通り紅色光合成細菌Rhodobacter capsulatusを含アセトン培地で培養することで2種の生体触媒(アセトンカルボキシラーゼおよび3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素)を発現・分離に成功した。 加えて、可視光エネルギー利用によるNAD+のNADHへの還元系に得られた酵素抽出液を加えることでアセト酢酸から3-ヒドロキシ酪酸への変換に成功した。可視光照射7時間でアセト酢酸から93%の高収率で3-ヒドロキシ酪酸への変換を達成しており、当初目標の収率10%を大きく上回る成果を得た。可視光駆動型NADH再生系を複合化し、二酸化炭素およびアセトンから生分解性プラスチックのモノマー、3-ヒドロキシ酪酸が合成可能な反応系の構築に成功した。本反応系では可視光照射7時間で原料のアセトンから81%の高収率で3-ヒドロキシ酪酸が生成しており、当初目標の収率30%を大きく上回る成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、紅色光合成細菌Rhodobacter capsulatusを含アセトン培地で培養することでアセトンカルボキシラーゼおよび3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素を発現させ、2種の生体触媒を含むサンプルと可視光駆動型NADH再生系を複合化し、二酸化炭素およびアセトンから生分解性プラスチックのモノマー、3-ヒドロキシ酪酸が合成可能な反応系の構築と目標収率を30%と設定していたが、研究開始1年で当初目標を上回る81%の収率を達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
本堤案において進める具体的な研究項目は以下の4つである. 項目1) アセトンカルボキシラーゼによる二酸化炭素とアセトンを原料としたアセト酢酸合成 項目2) 光触媒・金属微粒子触媒・3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素からなる光レドックス系によるアセト酢酸を原料とした3-ヒドロキシ酪酸合成 項目3) 機能性光触媒の設計と創製 項目4) 機能性光触媒の光レドックス系への適用 本年度は、項目1)、2)に加えて3)関する研究を重点的に進める。2022年度はアセトン培地での紅色光合成細菌Rhodobacter capsulatusの培養によりアセトンカルボキシラーゼ及び3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素 を含む酵素抽出液を得ることができている。さらに得られた酵素抽出液、光触媒色素、金属錯体触媒からなる光レドックス系によりアセトンと 二酸化炭素から3-ヒドロキシ酪酸生成まで達成した。 2023年度以降は、酵素抽出液に含まれるアセトンカルボキシラーゼ及び3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素を精製し、酵素活性向上に関する研究を進める。加えて、2023年度は光レドックス系に最適な光触媒材料の探索を開始する。探索した光触媒材料とアセトンカルボキシラーゼ及び3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素とを複合化し、アセトンと二酸化炭素から3-ヒドロキシ酪酸生成の効率のさらなる向上を目指す。
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