今後の研究の推進方策 |
本研究では、MoS2-FETを光の照射と組み合わせることにより、分子の電子状態を検出し、分子特定センサーとして利用することを行う。そのために、MoS2-FET表面に分子を吸着させたのちに、表面への入射光のエネルギーを掃引しながら、ドレイン電流(ID)を測定し、検出に必要な光のエネルギーの最小値(EPhoto,TH)を求める。様々な分子に対するEPhoto,THを求め、EPhoto,THの値からの分子特定を検討する。分子のHOMOがギャップ内にあり、CBMよりEmだけ高いエネルギーを持つ場合、エネルギー(Eg - Em)をもった光の照射によって分子のHOMOからMoS2の伝導帯への電子励起を引き起こすことができる。また、分子のLUMOがギャップ内にある場合も同様である。したがってMoS2のギャップ内にHOMOやLUMOが存在する分子が本研究の方法で検出できる候補となる。前述の通り、小さなHOMO-LUMOギャップを持つ銅ナフタロシアニン分子を用いた実験に成功したために、分子種特定を行うことが可能であることを示唆する結果を得ることができた。今回の結果を受けて、今後は、さらに多くの分子についての実験を行い、さらに分子種特定の実験が期待される。テトラチアフルバレン(TTF), BV(ベンジルビオロゲン), 一酸化窒素(NO), 二酸化窒素(NO2), コバルトフタロシアニン(CoPc2), テトラシアノエチレン(TCNE)などの分子は全てMoS2-FETのバンドギャップ内にHOMO、LUMOが位置すると予想され、これらのの分子を吸着させた時に、フォトカレントを検出できることが見込まれる。今後は、さらに多くの分子が検出できるよう、実験を進めていきたいと考えている。
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