今後の研究の推進方策 |
本年度では、非対称Z型前駆体分子の化学気相成長法による金基板上での極性高分子を形成させることに成功したので、今後はこの極性高分子構造を脱水素縮環させた極性グラフェンナノリボン(GNR)の表面合成に挑む。GNRに付与する官能基はブトキシ基であり、酸素元素を含んでいる。従来の合成手法である超高真空成長法では400℃程度の高温での脱水素縮環反応(熱変換)を含んでいるため、官能基が分解してしまう問題点がある(C. Eduard, et al., ACS Nano, 11, 7 2017)。この問題解決のために、新しい低温合成法「分子気相アシスト法」を提案する。この手法では、我々が世界に先駆けて開発した「2ゾーン化学気相成長法」(H. Sakaguchi, et al., Nat. Chem., 9, 57 2017)を用いて、独自に分子設計した「非対称Z型前駆体」を金属表面上で重合した高分子に、水素受容性分子(DDQ:2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン、酸素等)ガスを照射することにより化学変換(水素引抜反応)を起こさせ、従来の気相成長法では達成できなかった低温での脱水素縮環反応を高効率で進行させ、官能基を熱分解すること無く合成する新しいGNR成長法である。本手法を用いることにより、従来に無い新しい機能性GNR(強誘電性)を合成する。
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