研究課題/領域番号 |
22H01895
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
平野 篤 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (90613547)
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研究分担者 |
亀田 倫史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 上級主任研究員 (40415774)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | タンパク質 / ナノ粒子 / タンパク質コロナ / 酸化還元 / 分子動力学計算 |
研究実績の概要 |
本年度は、カーボンナノチューブを使用して、補酵素への酸化ストレスにおける遷移金属の影響を詳細に調査した。補酵素としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを利用した。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドには還元型のNADHと酸化型のNAD+が存在する。カーボンナノチューブの存在下では、NADHからカーボンナノチューブへ電子移動が起こり、NADHが酸化されることが明らかになった。遷移金属が共存する条件下では、遷移金属がカーボンナノチューブによるNADHの酸化反応を触媒することも明らかになった。過去の研究において、カーボンナノチューブが細胞内に取り込まれると細胞内のNADH/NAD+比が変化することが報告されている。本研究の結果は、このようなNADH/NAD+比の変化が、カーボンナノチューブによるNADHの酸化反応に起因することを示唆している。なお、カーボンナノチューブに対する結合量はNADHよりもNAD+のほうが多いことが実験から示された。この結合量の違いは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの分子間の静電反発力に起因することが分子動力学計算の結果から示唆された。本研究成果は、カーボンナノチューブが細胞内の代謝系に影響を与えるメカニズムを提案するものであり、カーボンナノチューブが有する酸化ストレスの理解につながる有益な結果となった。今後、カーボンナノチューブ以外のナノ粒子にも本メカニズムを適用できるか調査することにより、ナノ粒子が有する酸化ストレスの全貌を理解できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、カーボンナノチューブを使用して、補酵素(およびタンパク質)への酸化ストレスにおける遷移金属の影響を調査した。
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今後の研究の推進方策 |
酸化ストレス機構がカーボンナノチューブの最小構成単位であるカーボンナノベルトについても成り立つか検証することで、カーボンナノチューブの長さが酸化ストレスに与える影響を理解できる可能性がある。したがって、当初の計画に加え、カーボンナノベルトについても酸化ストレスを検証することで、カーボンナノチューブを含めたナノ粒子全般の酸化ストレスの理解を推進できる可能性がある。
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