研究課題/領域番号 |
22H01906
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
亀山 達矢 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40646759)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 量子ドット / 半導体ナノ粒子 / 光エネルギー変換 / 異方形状 / 電位勾配 |
研究実績の概要 |
サイズが約10 nm以下の半導体ナノ粒子(量子ドット)は、量子閉じ込め効果のためにバルクとは異なった物理化学特性を示し、光触媒や太陽電池などの光エネルギー変換材料としての研究が活発に行われている。光エネルギーの高効率な利用のためには、励起子の電荷分離によるキャリアの長寿命化が重要となる。本研究では、分子とバルクの境界領域(数nm)において、電位勾配形成の電荷分離への効果について明らかにするべく、一粒子内に組成の傾斜を形成した量子ドットを作製する。この粒子内に形成される電位勾配とその物性の解明を行い、量子ドットにおける効率的な電荷分離形成の手法を確立する。 コロイド法により合成したZnSe-AgInSe2量子ドットをHAADF-STEM観察したところ、複数あるロッド形状粒子で、両端において明暗のコントラストが見られる事を見出した。この粒子のナノスケールEDS分析から、Znの含有率がロッドの両端において大きく異なることがわかった。そこで、光電着法による析出反応を行い、電子構造の可視化を試みた。ロッド端部に集約された電子を使い、金を光還元析出させたところ、ロッド端部にのみ金属が析出することを確認した。すなわち、実際に励起電子が粒子内で偏りを生じていることを意味している。一方で、正孔は酸化鉛などの酸化析出により可視化することができるため、鉛イオンを含む水溶液中で同様の検討を行った金の場合と同様にリッドの末端において粒子の析出が確認されたものの、予想していた結果とは異なり得られた粒子はPbSeであった。PbSeは近赤外にバンドギャップを有する半導体であり、本手法により半導体同士のヘテロ接合を形成させることができることがわかった。あらかじめ予想されていた結果ではないものの、半導体ヘテロ接合は電荷分離を促進するために有効であり、光エネルギー変換の高効率化に寄与する大変興味深い結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では分子とバルクの境界領域(数nm)において、電位勾配形成の電荷分離への効果について明らかにするべく、量子ドット内への電位勾配形成とその物性の解明をロッド形状ZnSe-AgInSe2からなる固溶体量子ドットにおいて行った。電子エネルギー準位の傾斜構造の確認を目的として、光電着反応を行ったところ、当初の予想に反して鉛イオン存在下で、光照射によりPbSeとの半導体ヘテロ接合が形成されることがわかった。このようなヘテロ構造体は光エネルギー変換を高効率化させる可能性があり非常に興味深いため、これに関する検討を追加して行うこととした。これにより当初の計画が後ろ倒しになった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究において光電着法による析出反応を行い、電子構造の可視化を試みた。光電着により金を光還元析出させたところ、ロッド端部に選択的に析出することが確認できた。また、このときナノロッドを励起した際の発光は、金析出によりほぼ消光しており、電荷キャリアが先端に集約されることが示唆される結果を得た。このことは、ナノロッドが予想していたような電位の傾斜構造を持つだけでなく、キャリアのエネルギー変換への利用においても、金属ナノ粒子が助触媒として有効に使えることを意味している。また、PbSeとのヘテロ接合の形成についても新しい知見を得られた。次年度以降では、これらを利用した光電気化学的手法によるエネルギー変換特性向上への検討を行う。
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