研究課題/領域番号 |
22H01910
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白木 智丈 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10508089)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 欠陥 / 近赤外光 / 分子修飾 / ドープ / π共役 / ヘテロ原子 / アジド |
研究実績の概要 |
化学修飾を欠陥ドープ技術へ応用して開発された局所化学修飾単層カーボンナノチューブ(lf-SWCNT)は、高輝度化した1000 nm以上の近赤外発光を示す新材料である。この発光特性は、理論研究において、ナノチューブのsp2炭素ネットワーク中に化学修飾で形成されるsp3炭素欠陥の配置に依存して変調できることが示唆されてきた。今回、新たな修飾分子設計として、アリールジアゾニウム塩のオルト位にπ共役系の置換を導入する構造を考案しlf-SWCNTを合成した結果、従来の修飾技術で一般的に観測されていた近赤外発光よりも100 nm以上も長波長化した新たな発光成分を選択的に作りだせることがわかった。種々の置換基構造の検証から、π共役系オルト置換基が本発光特性を生み出す設計因子となることが示された。また、この設計性を応用して、アセチレン基を置換基構造として用いることでクリックケミストリーの技術が適用でき、lf-SWCNTにさらなる機能団の導入が可能となった。さらに、π共役系置換基としてヘテロ原子を有するヘテロ環構造を用いた結果、長波長発光の創出には六員環だけでなく五員環の利用も可能であり、分子設計の多様性を拡張できたとともに、ヘテロ原子の種類を変えることでも発光波長のチューニングが行えることを見出した。さらに、オルト置換基としてピリジン環を用いて合成したlf-SWCNTは、従来の修飾方法で合成されたものよりも大きな波長変化の応答性を示す高感度の近赤外pHセンサーを開発できることもわかった。 他にも、アジド化合物を修飾分子とした環化付加反応によって、lf-SWCNTを合成することに初めて成功した。この反応で形成させた修飾サイトからの発光は、周囲の誘電環境変化に応答して生じる波長変化が従来のものと異なり、lf-SWCNTの修飾サイトの物性自体を化学構造の違いを基に改変できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、本研究アプローチで提案していた修飾分子設計を戦略として、lf-SWCNTの欠陥配置制御に基づく長波長化した近赤外発光を創出するための分子設計指針の確立やlf-SWCNT合成のための新たな化学修飾反応を開拓することができたことから、非常に大きな研究の進捗と成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度からは、予定している実験計画ならびにこれまで得られた独自知見をさらに発展させて、lf-SWCNTの物性解明やさらなる機能化、応用技術の開発を行っていく。
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