研究課題/領域番号 |
22H01932
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
黒田 眞司 筑波大学, 数理物質系, 教授 (40221949)
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研究分担者 |
木村 昭夫 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (00272534)
秋山 了太 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40633962)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | スピン軌道トルク / トポロジカル絶縁体 |
研究実績の概要 |
磁気記録デバイスの書込みにあたる磁化反転の手法としてスピン軌道トルク(SOT)を用いる方法が注目されている。これまで、スピン軌道相互作用の大きい重金属を用いた磁化反転が研究されてきたが、トポロジカル絶縁体を利用すると、表面状態のスピン偏極した電子流によってより高効率での磁化反転が実現するという期待が持たれ、研究が行われている。本研究では、トポロジカル結晶絶縁体に属するSnTeと強磁性体との接合構造を作製し、SnTeの表面状態のスピン偏極電子流によるスピン軌道トルクを実験的に評価し、高効率の磁化反転の可能性を探索することを目的として研究を行っている。 実際のSnTeの結晶はSn欠損により高密度の正孔が発生しバルク導電性を示すため、自明な絶縁体であるPbTeとの混晶である(Pb,Sn)Teと磁性絶縁体であるEuSとの接合構造を実験の対象とした。この接合構造を分子線エピタキシー(MBE)法により作製した。Pb組成50%程度の範囲で、トポロジカル絶縁体としての性質を保ちつつ、バルク導電性が抑制されることを確認できた。またEuSとの接合構造を作製し、種々の構造評価を行った結果、平坦で急峻な界面を持つ接合構造であることを確認した。 トポロジカル絶縁体と磁性体の界面での磁性を評価するため、SnTe/EuS接合構造に対して、偏極中性子線反射測定(PNR)を行った。スピン偏極中性子線の反射率カーブのフィッティングより界面付近での磁化のプロファイルを求めたところ、EuSとの界面からSnTe層の内側2nm程度の範囲で磁化が発現していることが明らかとなった。これは近接効果による磁性体からトポロジカル表面状態への磁化の染み出しによるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(Pb,Sn)Te/EuSの接合構造を作製し、バルク導電性が抑制され、平坦で急峻な界面を持つことが確認されたため。
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今後の研究の推進方策 |
作製した(Pb,Sn)Te/EuSに対してACホール測定を行い、スピン軌道トルクの大きさを評価する。
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