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2023 年度 実績報告書

遷移金属ケイ化物キラル薄膜によるスピン偏極エレクトロニクスの創成

研究課題

研究課題/領域番号 22H01944
配分区分補助金
研究機関大阪公立大学

研究代表者

宍戸 寛明  大阪公立大学, 研究推進機構, 教授 (80549585)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードキラリティ誘起スピン選択性 / スピンエレクトロニクス
研究実績の概要

CrSi2は空間群P6222もしくはP6422に属し,単軸性のキラルな結晶構造を持つ.申請者はSi基板上にCrを蒸着し,フォトリソグラフィーによる微細加工で矩形形状を作製した.このCr膜を高真空中で加熱し固相反応によりSi2の多結晶膜を得た.
CrSi2膜上にAu端子を蒸着し,電流を印加するとキラリティ誘起スピン選択性(CISS)により伝導電子のスピンがキラリティに応じて偏極する.このときスピン依存した化学ポテンシャルには差が生じていると考えられる.CrSi2膜上にWもしくはPt薄膜を検出電極として蒸着するとCrSi2とW/Pt膜のスピンポテンシャルの差によりスピン流がW/Pt電極に吸い上げられ,逆スピンホール効果により横方向の電位差を生じる.このような原理で,ゼロ磁場下での横電圧の測定によりCISS効果を観測する.W/Pt電極の下に電流が流れている局所測定においても,W/Pt電極から数mm離れた位置のみで電流を印加した非局所測定においても有意な横電圧が観測された.これはCISS効果により得られたものと考えられる.CrSi2多結晶膜では掌性の制御はできていないと考えられるが,左右どちらかに偏りが生じているため有意なCISS信号が得られたと考えられる.WとPtではスピンホール角の符号が逆なため,逆符号のCISS信号が期待される.実験ではW電極においてもPt電極においても正負両方のCISS信号が観測された.これは試料ごとの掌性の違いも影響していると考えられ,さらなる検証が必要である.
矩形試料の左右から同時に電流印加を行った場合,観測されるCISS信号はそれぞれの電極から単独で信号を入力した場合の重ね合わせになっていることを示した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

W電極においてもPt電極においてもスピン流の吸い上げが生じることを示した.矩形試料の左右から同時に電流印加を行った場合,観測されるCISS信号はそれぞれの電極から単独で信号を入力した場合の重ね合わせになっていることを示した.

今後の研究の推進方策

CrSi2膜にフォトリソグラフィによる微細加工を施し,メアンダライン,U型,Y型,O型などの構造を作製し,スピン偏極の伝搬について明らかにする.メアンダライン試料を用いてスピン偏極の伝搬距離がどこまで伸長するのかを調べる.また,スピン偏極の伝搬速度についても測定を行いたい.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Chirality-Induced Selectivity of Phonon Angular Momenta in Chiral Quartz Crystals2024

    • 著者名/発表者名
      Ohe Kazuki、Shishido Hiroaki、Kato Masaki、Utsumi Shoyo、Matsuura Hiroyasu、Togawa Yoshihiko
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 132 ページ: 056302/1-7

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.132.056302

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Spin polarization gate device based on the chirality-induced spin selectivity and robust nonlocal spin polarization2023

    • 著者名/発表者名
      Shishido Hiroaki、Hosaka Yuta、Monden Kenta、Inui Akito、Sayo Taisei、Kousaka Yusuke、Togawa Yoshihiko
    • 雑誌名

      The Journal of Chemical Physics

      巻: 159 ページ: 064502/1-7

    • DOI

      10.1063/5.0156505

    • 査読あり
  • [学会発表] キラル構造結晶NbSi2における電流誘起スピン偏極のNMRによる検証2024

    • 著者名/発表者名
      桑原慶大, 八島光晴, 椋田秀和, 宍戸寛明, 戸川欣彦
    • 学会等名
      日本物理学会2023年春季大会
  • [学会発表] 6.Robust nonlocal spin polarization in chiral crystals and spin polarization gate device based on the chirality-induced spin selectivity2023

    • 著者名/発表者名
      H. Shishido, Y. Hosaka, K. Monden, A. Inui, T. Sayo, Y. Kousaka, Y. Togawa
    • 学会等名
      Joint Symposia of Materials Research Meeting 2023 (MRM2023)
    • 国際学会
  • [学会発表] 無機キラル化合物NbGe2の選択的不斉単結晶育成手法の確立2023

    • 著者名/発表者名
      小泉太護, 姜佳良, 高阪勇輔, 宍戸寛明, 戸川欣彦
    • 学会等名
      日本物理学会第78回年次大会
  • [学会発表] 円偏波表面弾性波の生成手法の開発2023

    • 著者名/発表者名
      松田有未, 島本雄介, 宍戸寛明, 戸川欣彦
    • 学会等名
      日本物理学会第78回年次大会

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公開日: 2024-12-25  

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