研究課題/領域番号 |
22H01945
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
堤 潤也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (30573141)
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研究分担者 |
須丸 公雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (40344436)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 有機薄膜トランジスタ / バイオセンサー / バイオイメージング / 非標識 / 変調分光 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、非標識かつ高効率に細胞の状態を判別可能な、細胞状態イメージング技術を開発することである。研究代表者がこれまでに開発した、物質吸着により半導体表面に誘起された微小な表面電荷を高感度に可視化する独自技術を発展させ、細胞吸着のみならず、細胞の状態変化により誘起された表面電荷をも可視化可能にすることで、非標識の細胞状態イメージングを実現する。 令和4年度は、最初のターゲットとして、細胞死の過程を可視化する実証実験に取り組んだ。当該実験には、安定して生細胞の長時間測定が行える環境が必要なため、測定装置に顕微鏡用インキュベーターを組み込むとともに、細胞の足場となる測定セル表面(半導体表面)への細胞親和性素材のコーティングを試みた。その結果、ラミニン系の素材を数時間かけてコーティングすることで、測定イメージに影響を与えることなく、細胞の定着度・培養効率を向上することができた。そこで次に、HeLa細胞を測定セルで培養しつつ、細胞毒性を発揮する薬剤2種(イオノマイシン、ジアリールエテン)を投与し、細胞死に至る過程の測定を行った。その結果、いずれの薬剤を投与した場合も、従来の顕微鏡では不可視の未知のコントラストを捉えるに至った。この未知のコントラストについて、アポトーシス検出試薬や、脂質膜染色試薬を用いて検討した結果、細胞死の過程で細胞内の脂肪滴が細胞外に漏出する過程を捉えたものであることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
半導体表面は細胞の足場として適しているとは言えないが、細胞親和性の高い素材をコーティングすることで、培養効率を大幅に向上できた。また、最初のターゲットとしてトライした細胞死の過程について、従来顕微鏡では不可視の未知のコントラストを捉えるなど、初年度ながら、本研究の手法のポテンシャルについて手応えを感じている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、細胞死以外の細胞状態可視化の実証研究に取り組む。具体的には、ヒト小腸上皮様細胞をターゲットとして、薬剤の投与によってタイトジャンクションが開閉するミクロな細胞機能の可視化に取り組む。タイトジャンクションの開閉については、従来TEERと呼ばれるバルクの電気測定法が用いられてきたことから、TEERの同時測定も可能なセットアップを開発し、TEERの測定結果とタイトジャンクションのミクロな開閉機構との相関を明らかにする。
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