研究課題/領域番号 |
22H01951
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
米谷 玲皇 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (90466780)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | NEMS / ナノメカニカル振動子 / センシング / 光圧 / 情報科学 |
研究実績の概要 |
新たな物質操作・輸送技術や分析技術,合成技術の創出に向け、ナノメカニカル振動子をコンポーネントとするNEMS(Nanoelectromechanical systems)を利用した光圧の超高感度センシング技術を生み出すことと、これを活用することによりナノ構造と光の相互作用に関する理解を深化させることが、本研究の狙いである。当年度は、多様な環境におけるナノメカニカル振動子の振動挙動に関して理解を深めるための基礎的研究,振動検出方法に関する研究を推進した。特に、液中の振動挙動に関し液濃度の計測を通してその理解深化に関する研究を進めた。ナノメカニカル振動子は、集束イオンビームによるイオン注入およびウエットエッチングを利用したプロセスにより作製したシリコンからなる両持ち梁振動子を用いた。結果として、共振周波数変化や振幅変化を直接的に用いる従来の手法と比較し、畳み込みニューラルネットワークに基づく深層学習を用いて液中においてナノメカニカル振動子の振動を高感度に検出可能であることを示すとともに、深層学習の学習プロセスの可視化手法を本研究に適用することにより振幅の小さな振動が高感度であることを見出した。従来NEMSナノメカニカル振動子を利用したセンシングにおいて活用されていなかった振動挙動が高感度である可能性を示唆する知見でもある。この成果は、畳み込みニューラルネットワークを利用した振動検出法が、光圧の高感度なセンシングを達成するための有力な手段であることを期待させるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先述したように、本研究の目的は、NEMSをベースとする超高感度な光圧のセンシング技術創出と、これを活用した光とナノ構造体の相互作用に関して理解を深めることである。当年度は、特に、前者の超高感度な光圧のセンシング達成を狙い、その基礎的研究を推進してきた。現在のところ、上記したように、多様な環境におけるNEMSのコンポーネントであるナノメカニカル振動子の振動挙動に理解と振動検出法に関する研究を推進し、液濃度計測を通して、従来の共振周波数シフト等を利用した手法と比較して、畳み込みニューラルネットワークに基づく深層学習を利用した情報科学的アプローチにより液中において高感度に振動変化を検出可能であることと、従来センシングに利用されていなかった振動が高感度である可能性を見出している。この知見は、多様な環境において光圧のセンシングをNEMSにより高感度に達成するための有効な知見である。このことから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、NEMSナノメカニカル振動子を利用した光圧の高感度なセンシングに向け、その知見の獲得に着手する。具体的には、特に、保有する知見である静電結合型ナノメカニカル振動子を利用した光圧のセンシング手法をベースとして、新たなデバイス構造の検討をすすめる。静電結合型ナノメカニカル振動子は、光圧のセンシングにおいて問題となる光照射に伴う熱の影響を低減できるデバイスである。このデバイスを利用した一層高感度なセンシングを狙い、新たなデバイス構造を模索する。さらに、上記したように畳み込みニューラルネットワークを利用した深層学習に基づく振動検出法は高感度な光圧計測が期待される手法であり、獲得した成果であるこの情報科学的アプローチの適用も継続して検討する。新たなデバイス構造における振動検出法としても想定する。高感度な光圧のセンシングに向けた今後の研究推進方策として、このようにデバイス構造,振動検出法に関する基礎的な研究を進める。
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