研究実績の概要 |
本研究では、全固体フッ化物イオン電池における電極・電解質材料内部やそれらの界面でのフッ素輸送機構のボトルネック解消に向け、薄膜技術を活用した全エピタキシャルモデル電池の作製と評価を目指している。 2023年度は、不純物置換量も含めた任意組成のフッ化物成膜に対応できるエピタキシャル成膜技術の開発に取り組んだ。具体的には、予め原料ターゲットの組成制御が容易なスパッタ法に着目し、「ターゲット作製」「成膜時のフッ素欠損抑制」「エピタキシャル成長」のそれぞれの素過程の確立を行った。対象とした材料は、固体電解質のLa1-xBaxF3-xであり、所望の組成(x=0, 0.05, 0.10, 0.20)のLaF3とBaF2を秤量し、粉砕混合・圧粉成型によるスパッタ向けのターゲット作製が可能であることを見出した。フッ素欠損の抑制には、CF4ガスを成膜中に部分的に混合することが有効であることを確認した。 これらの過程を踏まえた反応性スパッタ法により、CaF2(111)単結晶基板上にLa1-xBaxF3-x(x=0, 0.05, 0.10, 0.20)エピタキシャル薄膜の作製に成功した。なお、バルクにおいてはx=0.20ではタイソナイト型と蛍石型に相分離することが知られているが(固溶限界)、蛍石型のCaF2(111)基板上では、単一の蛍石型La0.80Ba0.20F2.8(111)エピタキシャル薄膜が得られ、エピタキシャル安定化の効果を示すことができた。これらのエピタキシャル薄膜のF-イオン伝導度を測定したところ、~10-5 Scm-1(@室温)を得た。これは、バルク材料と同等であり、全固体フッ化物電池への転用が十分可能である。 このように、望みのフッ化物の原料ターゲットを容易に作製できること、十分なF-イオン伝導度を有するエピタキシャル薄膜が得られたことから、来年度への順調な進捗が期待できる結果である。
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