研究課題
近年の原子間力顕微鏡(AFM)の技術発展に伴い、固液界面構造の3次元サブナノスケール計測や秒スケールで生じる動態の原子・分子分解能観察が可能となった。一方で、その画像解析や探針制御については従来のAFMと同様の手法が用いられており、比較的弱い力で表面上に吸着・拡散するイオン・分子を十分な解像度や速度で可視化することが未だ困難である。本研究ではデータ科学手法を3次元AFMデータへ適用することで、従来のAFMの性能限界を超えた超解像化解析及び高速観察を実現する。二年度目は引き続きデータ科学手法による解析手法の基礎検討に取り組んだ。前年度に問題となっていた特徴抽出の機能については安定性が向上し、実際にフォースカーブ形状の比較ができるようになっている。また、超解像化のアルゴリズム開発にも着手しているが、こちらはまだ安定な動作までは至っておらず、次年度も引き続き取り組む予定である。一方で、昨年度に設計したAFMコントローラについては、電子部品を入手することができたため、実際のコントローラ構築に取り組んだ。このコントローラは6入力7出力の端子を備えており、100MSPSのサンプリングレートでの入出力が可能である。このコントローラの性能評価により、十分に小さな入出力間遅延、及び低ノイズ性能を有していることを確認した。今後はこのコントローラに実際にAFM計測機能を組み込み、高速原子分解能AFM観察を行う。
2: おおむね順調に進展している
昨年度に入手が難航した電子部品が入り、コントローラを構築して性能評価まで行い、高速観察に成功した。一方で、データ科学手法を用いた超解像化のアルゴリズムについては、まだ動作が不安定であり、まだ実証実験へ応用するフェーズには至らなかった。しかし、並行して後年度に実施する予定の応用研究の試料調製を行っており、実験項目を前後させながら進めている状況である。そのため、全体を通して概ね順調に進んでいると言える。
次年度については、超解像化を実現するためのアルゴリズムの改善に取り組む。また、今年度開発したAFMコントローラについてもアップデートを行い、さらなる計測速度向上を目指す。また、応用研究において、これらの技術を用いた実証実験を行う。
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