研究課題/領域番号 |
22H01961
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
内橋 隆 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, グループリーダー (90354331)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 超伝導 / 表面原子層 / 微細加工 / トランスポート測定 / STM測定 |
研究実績の概要 |
本年度は計画に従って、現有の多元極限環境(超高真空・極低温・強磁場)対応のトランスポート測定装置を拡張し、試料準備チャンバーおよび原子構造評価に用いる低速電子回折(LEED)装置の整備を行った。さらに現有装置に走査トンネル顕微鏡(STM)の機能を追加した。STM測定の中核となる移動式のカプセル型ヘッドを完成させ、極低温環境で動作テストを行った。これまでに80 K, 4.2 K, 1.5 Kでテスト試料の原子分解能像を得ることに成功した。走査トンネル分光についても安定した測定を実現し、鉛の明瞭な超伝導エネルギーギャップを得た。本装置の大きな特徴として、同一試料に対して極限環境下でのトランスポート測定とSTM測定の両方を実施できることがあげられる。これにより、初年度の計画にあげた目標をほぼ達成することができた。 本研究課題では、表面原子層結晶を超高真空環境で微細加工して1~10ミクロン幅の微細伝導チャンネルを作製し、磁場中で量子干渉効果を観測することを目標としている。これまでは試料の微細加工にはシャドーマスクを介したアルゴンスパッタを用いていたが、スパッタによって伝導チャンネルがそのエッジから汚染されるという問題を抱えていた。そこでアルゴンスパッタの代わりにNaClを蒸着することで伝導チャンネルを定義する手法を新たに開発し、その実用性を確認した。NaClが吸着した表面原子層は絶縁体化し、スパッタと違って近傍の領域を汚さないため、この手法はマスクパターニングとして有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現有装置の拡張と整備において、格段の進歩があった。本課題では、トランスポート測定に用いる試料そのものをSTMで観測することで、ジョセフソン接合としての原子ステップの特性を明らかにすることを計画している。STM機能の追加がほぼ完成したことで、この目標を達成する見込みが得られた。一方で、表面原子層結晶のシャドーマスクを用いた微細加工においては、伝導チャンネルがエッジから汚染されるという問題が明らかになったが、従来のアルゴンスパッタをNaCl蒸着に置換することで、パターニングが可能であることを確認した。これにより、超高真空環境における微細加工という技術的な問題点をクリアできる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に増設した試料準備チャンバーを立ち上げ、本課題の研究計画を並行して進める。まずシリコン基板上に成長したインジウム原子層の伝導チャンネル幅を1~10ミクロン程度に制限して、超伝導転移を観測する。また、電流-電圧特性から臨界電流密度を求め、従来の巨視スケールでの実験結果が再現されることを確かめる。 この試料作製方法を応用して、試料表面に存在する原子ステップがジョセフソン接合として働くことを実証する。原子ステップを利用して超伝導量子干渉素子(SQUID)に対応する試料構造を作製し、磁場を試料面直方向に印加する。磁場の関数として臨界電流値が振動することを観測し、原子ステップのジョセフソン接合としての振る舞いを明らかにする。一方で、同じ試料を、前年度に整備したカプセル型STMヘッドを用いて観測する。電流経路をSTMでプローブし、原子ステップ付近の原子構造および磁場下における渦電流(ボルテックス)の観測から、ジョセフソン接合の強さを評価する。これらの結果に基づいて、トランスポート測定で得られる臨界電流の振動現象を定量的に解析する。 さらに、超伝導ヘリカル状態の実験的検証を行う。試料面内方向に強い磁場を印加すると超伝導秩序変数が空間変調したヘリカル状態が発生する。このとき、原子ステップがジョセフソン接合として働くため、系全体として量子的な干渉が発生する。この原理に基づき、磁場の関数として臨界電流値の振動を観測することによりヘリカル状態の存在を検出する。試料はカプセル型STMを用いて観測し、その原子ステップでの結合強さを評価することで、ヘリカル状態を定量的に解析する。
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