研究課題/領域番号 |
22H01963
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
秋葉 圭一郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 量子機能創製研究センター, 主幹研究員 (80712538)
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研究分担者 |
三宮 工 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (60610152)
弓削 達郎 静岡大学, 理学部, 准教授 (70547380)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 電子線励起発光 / 光子バンチング / 量子もつれ / 電子-光子相関 |
研究実績の概要 |
本研究で検証を行う電子と光子の量子もつれを生成するにあたっては、高速電子に付随する電磁場によって、金属ナノ構造などの局所電磁場を直接誘起することで得られるコヒーレント発光を利用することになる。初年度となる2022年度の補助事業では、まず、この電子線励起コヒーレント発光について、光子検出による光子間時間相関測定によって、これまでには調べられていない光子統計性の評価を行った。ここでは、たかだか1光子の生成が予想されるコヒーレント発光にもかかわらず、2光子数状態の存在が必要となる光子バンチングが観察されるという新たな発見があった。このバンチングを示す光子の同時計数と光子生成レートの評価から、2光子数状態の生成は2次の効果であることを明らかにした。これらの結果を踏まえることで、電子線励起発光のバンチングを包括的に説明する光量子状態モデルを打ち立てた。 また、全くの想定外であったが、これまでに実施している電子‐光子相関計測において、量子もつれの効果に依存するパラメタを見出した。さらに、これを実験的に評価することで、ノイズの影響下ではあるものの、電子と光子の量子もつれの影響がパラメタ変化に寄与する可能性を示唆する結果を得た。 次に、計画通りに、量子もつれ検証において重要となるだけでなく、電子線励起コヒーレント発光を広く評価するためにも必要となる低加速実験用の電子線励起発光実験装置を設計し構築を完了した。また、電子検出に用いる物質としてCsPbBr系金属ハライドペロブスカイトを評価しシンチレータとして開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
低加速実験用の電子線励起発光実験装置の開発にあたり、急遽、走査型電子顕微鏡の納品が不可能となり研究計画の変更を余儀なくされたものの、補助事業期間の延長により2022年度の主目標は達成しているだけでなく、以下のような進展があったため。 電子線励起コヒーレント発光の光子統計評価により、光子バンチングが生じることを発見し、この解釈を通じて電子-光子間の量子もつれの基礎となる電子線励起発光の量子的な理解が深まった上、この内容を含めて学術論文 Physical Review Bの投稿出版に至っている。 また、これまでに実施していた電子-光子相関計測の評価から、量子もつれの効果に依存するパラメタを見出すことができ、初年度にもかかわらず、量子もつれに関わる評価を実験的に実施でき、電子と光子のペア相関の可能性を示唆する結果が得られ、これを含めて学術論文 Communication Physics の投稿出版に至っている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の補助事業により、電子線励起発光の量子状態の理解が深化した。これによって、電子励起コヒーレント発光において、電子‐光子の量子もつれは必ずしも生じない状況があることが示唆された。また、予期せずに実施できた電子-光子もつれの効果の評価により、実験的な評価を行う上でも条件の精査が重要になることがわかってきた。これらを踏まえると、電子と光子を完全に量子力学的に取り扱って、それらの量子もつれ状態を理論的にきちんと定式化し、生成条件や実験条件を精査しながら研究を進めることが肝要となる。
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