研究課題/領域番号 |
22H01970
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
三宅 秀人 三重大学, 工学研究科, 教授 (70209881)
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研究分担者 |
山田 陽一 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (00251033)
上杉 謙次郎 三重大学, 地域創生戦略企画室, 助教 (40867305) [辞退]
寒川 義裕 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (90327320)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 窒化物半導体 / 高温アニール / AlNテンプレート / 非極性面 / LED |
研究実績の概要 |
高Al組成のAlxGa1-xNを用いた短波長発光デバイスではc軸に垂直な方向への発光が支配的となるため、光取り出し効率改善の観点から非極性面への素子形成が期待されている。MOVPEおよびMBEでは、sapphire基板表面の窒化条件やV/III比でAlNの成長面方位が制御可能であることが、スパッタリング法による成膜と高温アニールを組み合わせたAlNの結晶成長はm面sapphire基板上での報告が限られており、面方位の制御について詳細な検討はなされていない。本研究では、r面サファイア基板上a面AlNおよびm面サファイア基板上m面AlNをスパッタアニール法で作製し、成膜条件・基板オフ角の検討により結晶品質の向上を図る。AlNのスパッタ成膜条件がm面sapphire基板上AlNの成長面方位と結晶性に与える影響を検討した。 RFスパッタ法を用いて、c軸投影方向へ0.2°のオフ角を有するm面sapphire基板上に450 nmのAlNを成膜した。成膜時の基板温度(Tsp)を300-600°Cで変化させた。続いてface-to-face配置にて1700°Cで3時間の高温アニールを施した。X線回折測定から、Tsp=300°Cでは高温アニールの有無にかかわらず主にm面AlNが成長していることが確認された。一方、Tsp=600°Cの場合、高温アニール前はm面と(11-22)面が混在していたが、高温アニール後は(11-22)面が支配的に形成されていることが確認された。高温アニール後のAlNの原子間力顕微鏡(AFM)像から、m面AlN(Tsp=300°C)はAlNのa軸方向に、(11-22)面AlN(600°C)はAlNのm軸方向にドメインやステップテラス構造が延伸した異方性を有する表面モフォロジーが観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、AlNのスパッタ成膜条件がm面sapphire基板上AlNの成長面方位と結晶性に与える影響を検討した。c軸投影方向へ0.2°のオフ角を有するm面sapphire基板上に450 nmのAlNを成膜した。その成膜時の基板温度(Tsp)を300-600°Cで変化させた。続いてface-to-face配置にて1700°Cで3時間の高温アニールを施した。 その結果、X線回折測定から、Tsp=300°Cでは高温アニールの有無にかかわらず主にm面AlNが成長していることが確認された。一方、Tsp=600°Cの場合、高温アニール前はm面と(11-22)面が混在していたが、高温アニール後は(11-22)面が支配的に形成されていることを明らかにした。高温アニール後のAlNの原子間力顕微鏡(AFM)像から、m面AlN(Tsp=300°C)はAlNのa軸方向に、(11-22)面AlN(600°C)はAlNのm軸方向にドメインやステップテラス構造が延伸した異方性を有する表面モフォロジーを観察した。高温アニール後のm面AlN(Tsp=300°C)のX線ロッキングカーブ(XRC)から、対称面であるAlN(10-11)回折のXRC半値全幅はX-ray//[0001]AlNと//[11-20]AlNでそれぞれ393 arcsecと345 arcsecであり、表面モフォロジーとは対照的に異方性が小さい良好な結晶性であること明らかにした。これらは、これまでのは発表で、世界最高レベルであることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
c面サファイア上AlN成長と同様に、サファイア基板表面の原子ステップ制御が重要であるが、非極性面成長ではサファイアとAlN界面の格子不整に起因して積層欠陥が発生するため、基板表面の制御はc面以上に重要である。サファイアのoff角を最適化すると共に、酸素雰囲気下での熱処理により原子ステップ高さを精緻に制御する。AlNの成長初期核結晶の品質向上には窒化法が適用できる。また、積層欠陥の低減では基板への溝加工が有効である知見を得ているので継続して実施する。 さらに、c面AlxGa1-xNのMOVPE成長で培った表面モフォロジー制御技術を活用し、電流注入で良好な発光特性を得るために不可欠な原子レベルで平坦な発光層を実現する。内部量子効率・電流注入効率・光取り出し効率の3要素をすべて高水準で実現して高い外部量子効率を得るために、面方位の違いを考慮に入れたデバイスシミュレーションにより多重量子井戸発光層・電子ブロック層・正孔注入層の構造を綿密に設計する。特にc面上ではTE偏光比と電流注入効率の両立が、非極性面上では正孔のキャリア注入設計が鍵となる。シミュレーションとそれに基づいた試作評価は互いにフィードバックを行う。高Al組成AlxGa1-xNにおいて支配的な非輻射再結合中心として働くIII族原子空孔などの点欠陥を低減するため、極低温PL測定を用いた内部量子効率評価を活用して成長条件を探索する。さらに、スパッタアニールAlN上とAlN自立基板上に作製したエピ構造を比較評価し、貫通転位と点欠陥の影響を切り分け、成長条件へのフィードバックを加速する。
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