研究課題/領域番号 |
22H01993
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉村 政志 大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (60314382)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ストイキオメトリ制御 / 深紫外光発生 / ホウ酸系結晶 / 結晶成長 / 非線形光学結晶 |
研究実績の概要 |
深紫外光波長変換特性に用いられる非線形光学結晶CsLiB6O10(CLBO)の内部には、光散乱として観察される点欠陥が含まれており、さらに高出力光を長期間発生させた際にはビームパターンが劣化し、光学素子内の点欠陥が局所的に増大する新しい事象が確認されている。ノンストイキオメトリック(非化学量論)欠陥がホウ酸系結晶の点欠陥の形成原因との仮説に基づいて、欠陥形成機構の解明と欠陥制御を試み、レーザー損傷耐性の向上を目指す。
融点付近にノンストイキオメトリック欠陥の原因となる固溶領域があると、フラックス成長させた結晶では化学量論比組成からの組成ずれに起因して冷却中に散乱体が析出することが知られている。本研究ではCLBOに同様の固溶域があると仮定し、作製した光学素子を高温に加熱した後、異なる速度で素子を冷却し、散乱体の挙動を調査した。その結果、ある成長条件で作製したCLBOはアニール後に徐冷を行うと内部の散乱欠陥が著しく増加することが明らかになった。冷却速度が速い場合は散乱体が変化しないことを確認しており、徐冷中に異相の析出(結晶成長)が進んだ結果と解釈できる。今後は異相析出物の同定、析出温度帯の調査、散乱体の融解温度(固溶域)を調査する。散乱体の融解温度を明らかにした上で、蒸気拡散によるノンストイキオメトリック欠陥の制御を実施する。また、平行して想定される固溶温度領域以下の低温で結晶成長を行う過剰フラックス組成からの結晶成長を試みた。通常のフラックス組成からの結晶に比べて内部散乱が少ないという予備結果が得られている一方で、フラックス成分が多いことから結晶成長の難度が高く、骸晶、核発生等の育成上の課題も明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
半導体結晶や強誘電体と比べて、常誘電体のホウ酸系光学結晶では、研究代表者の先行研究を除いてノンストイキオメトリック欠陥に関する研究がほとんど行われていない。そのため、先ずは研究対象であるCLBO結晶の内部散乱欠陥が他の結晶で報告されている固溶領域を起因に形成しているかどうかを明らかにする必要がある。初年度はこの仮説を裏付けるために、熱処理後の冷却中に散乱体が増減するかどうかを明らかにすることに加え、想定される固溶領域温度より低温で結晶成長が行える過剰フラックス組成からの単結晶成長を試みた。前者では冷却速度が遅い場合に散乱欠陥が増加するという新しい知見を得ることができおり、散乱体形成温度帯、散乱体融解温度帯(固溶領域)の調査へと段階的に進む道筋が見いだせた。固溶領域での熱処理時に蒸気拡散を試みることが最終目標であるため、初年度としては十分な成果を得たと考えている。また、低温成長においては、散乱体が減少するという予備結果を得ており、欠陥形成機構の仮説を裏付けるものと期待している。また、これらの研究に加えて、結晶内部の散乱を数値比較するため、レーザーを用いた散乱観察用の光学系構築と観察条件の最適化を進めた。水晶を基準として、各結晶の内部散乱の明るさを数値評価できる環境を整備した。熱処理、結晶成長に関する結果は、令和5年度に国内学会での研究発表を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
光学素子の熱処理、徐冷後に内部の散乱欠陥が増加したことを踏まえ、想定される異相結晶の相同定を行うとともに、析出温度帯を明らかにする。散乱が増加した結晶素子を利用して、融点近くの高温アニール実験を繰り返し、散乱体が融解する温度帯を明らかにする。これにより、CLBO結晶の固溶領域の仮説が補強され、欠陥形成メカニズムの機構解明へとつながる。その上で、ノンストイキオメトリック欠陥を補う蒸気発生用原料と密封容器を用いて、結晶を固溶温度域に加熱し、蒸気拡散による欠陥消失を試みる。蒸気拡散が十分に行えた場合は、素子を徐冷条件で冷却しても散乱体の増加にはつながらないと考えられる。また、平行して過剰フラックスによる低温成長結晶の作製、化学量論比組成からの結晶成長を行い、内部散乱欠陥の確認、熱処理による散乱体の増減を調査することで、CLBO結晶内の散乱体形成機構を解明する。散乱欠陥を制御した光学素子に関しては、深紫外レーザーの発生に用いた際の変換効率や非線形吸収特性、紫外光誘起劣化耐性などを明らかにし、レーザー応用を律速する結晶欠陥の特定、その制御の実用性を検証する。
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