研究課題/領域番号 |
22H01995
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
俵 毅彦 日本大学, 工学部, 教授 (40393798)
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研究分担者 |
足立 智 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10221722)
尾身 博雄 大和大学, 理工学部, 教授 (50257218)
徐 学俊 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, フロンティア機能物性研究部, 主任研究員 (80593334)
稲葉 智宏 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, フロンティア機能物性研究部, 研究主任 (90839119)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 量子メモリ / エルビウム / 同位体制御 |
研究実績の概要 |
2023年度はまず2022年度からの継続課題となっていた167Er:Y28SO結晶のコヒーレンス時間の評価を行った。行った2パルスフォトンエコー測定では、光学的コヒーレンス時間は約1マイクロ秒と見積もられた。これは従来のSi未純化ホスト結晶(YSO)の場合の1/10程度であり、予想と反して非常に短いコヒーレンス時間であることがわかった。この原因として、2022年度に明らかとなったように作製した167Er:Y28SO結晶では活性化167Erイオン濃度が想定した1ppmより低く、光学的な信号強度が弱いため、super hyper fine相互作用による早い緩和成分のみが観測にかかっている可能性が示唆される。また低い信号強度のため、光パルス強度を大きく取る必要があり、これにより167Erイオン間のより強い相互作用、すなわちでコヒーレンスを引き起こしていることも考えられる。この167Er:Y28SO結晶のコヒーレンス時間の減少のメカニズムについては、引き続き詳細な調査が必要である。 また結晶内における磁気ノイズの167Erコヒーレンス時間に与える影響について、理論的な検証を行った。これによりEr濃度とコヒーレンス時間はトレードオフの関係にあり、高効率なメモリ動作のためには慎重な材料設計が必要であるとことが明らかとなった。 また本研究の派生として、超音波と170Erイオンのハイブリッド状態の形成を実現した。これは超音波を用いた170Erの4f軌道電子のコヒーレント操作を可能にしたものであり、従来研究からさらに光量子メモリの制御生を飛躍的に高める技術である。本成果は2024年1月に報道発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
従来結晶(167Er:YSO)に比べ167Er:Y28SO結晶のコヒーレンス時間が短く、予想と反するそのメカニズム特定に時間を要している。一方で167Er核スピンへの光学的アクセスの準備は順調に進んでおり、測定に適した試料(167Er:YSOもしくは167Er:Y28SO結晶)を用いて、実験する準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は167Er核スピンへの光学的的アクセスを実現させるための光ーRFハイブリッド共振器の設計を行う。これまで有限要素法による計算機シミュレーション環境は整備済みである。現在167Erの光学遷移および超微細構造準位の両方に共鳴する共振器の設計を進めている。 上述のように当初計画していた167Er:Y28SOのコヒーレンス時間が予想に反し短いため、従来結晶を利用することも視野に入れ、理論・実験の両側面から通信波長帯光によるZEFOZ 法を基とした167Er核スピンアンサンブルへの光学的アクセスを試みる。 これにより光ー電子スピンー核スピン結合を実現し、年度内に通信波長帯光子の167Er核スピンへのコヒーレンス転写の実現を目指す。
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