研究課題/領域番号 |
22H02011
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
宮部 昌文 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 廃炉環境国際共同研究センター, 研究職 (20354863)
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研究分担者 |
長谷川 秀一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90262047)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | レーザーアブレーション / ドップラーフリー分光 / 蛍光分析 / レーザー加工 / 多段階共鳴励起 |
研究実績の概要 |
福島第一原子力発電所の廃炉では、廃炉作業に伴って発生する燃料デブリや放射性廃棄物をはじめ、様々な放射能を有する分析試料に対して、速やかに分析結果の出せる、遠隔性(非接触性)のある元素・核種組成分析法が求められている。本研究では、同位体シフトの小さい核種にも適用できる遠隔分光分析法として、レーザーアブレーションとドップラーフリー共鳴蛍光分光を組み合わせた、高分解能分析法の開発を行っている。カルシウムで実証したドップラーフリーアブレーション共鳴蛍光法が他の原子にも適用できることを実証するため、これまでに構築したカルシウム原子の共鳴蛍光分光システムに加えて、新たにストロンチウム原子の共鳴蛍光分光用のレーザー光源とその波長制御システムを構築した。この光源によって、ストロンチウムの高効率の2段階励起スキームである460nmと660nmの波長の光が安定して出力され、波長制御が可能であることを確認した。またストロンチウムのアブレーションプルームを用いて、ストロンチウムの第2励起状態からの蛍光信号が観測できることを確認した。また、ネオジムの核種分析に向けてパルス色素レーザーを用いた分光装置を構築した。さらに、本分析法のレーザー加工への応用を図るため、レーザー加工で使用されることの多い高出力ファイバレーザーを導入し、従来のNd:YAGレーザーの光と切り替えて使用できるアブレーション実験装置を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は3年計画の初年度であり、各種実験のための装置の構築に重点を置いた。ストロンチウムの2段階共鳴励起に適した波長の外部共振器半導体レーザーや、その光をエタロン干渉計に透過させて干渉縞を生じさせ、波長安定化ヘリウムネオンレーザーを用いて作った干渉縞を基準として、フィードバック制御で発振波長を安定化するシステムを構築した。また、レーザー加工時に発生するヒュームを模擬するため、これまでのNd:YAGレーザーによるアブレーション光源に加えて、レーザー加工でよく利用されるファイバーレーザー光源を新たに導入し、フラッパー機能の付いたミラーによって2つの光源を容易に切り替えて、パルス時間などの光源特性の違いが分光特性に及ぼす影響を調べられるアブレーション装置を構築した。また多くの核種への分光分析法の適用を目指して、半導体レーザーよりも広い波長可変範囲を持つパルス色素レーザーを用いた共鳴分光装置を構築した。このことから、当初の計画に沿って、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、開発した波長制御システムによって波長可変半導体レーザーを動作させ、ストロンチウムでドップラーフリー共鳴蛍光分光を行ない、カルシウムによる観測結果との比較・検討を行う。またネオジムについては共鳴イオン化分光により、多段階共鳴励起に適したネオジム原子の高励起準位の探査や励起スキームの選定を行う。また、ファイバーレーザーとYAGレーザーをアブレーション光源にした場合の分光特性の違いを比較する。さらに真空容器の真空度向上のための改造について検討する。
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