研究実績の概要 |
量子化学は理解のための学問から正確な化学現象の予言を行える学問に変身しなければならない。例えば合成化学は新しい機能を持つ物質を実際に創り出す化学であるが、分子の機能をあらかじめ正確に予測し、しかも予測された分子を実際に効率よく合成する道は、実際の合成化学者によっていつも考えられている。これを私たちが開発した正確な予言的量子化学によって実現する事が本研究の目的である。この線に沿って、本年度は、① Correct型スケーリングg関数の導入と検証 (J. Chem. Theory Comput. 20, 3749 (2024).)、② Gauss関数を用いたFC-変分計算: rGauss関数の積分法の開発 (J. Chem. Phys., 159, 024103 (2023).)、③ FC-LSE理論によるシュレーディンガー方程式の絶対解レベルで正確なポテンシャルカーブ の計算(J. Chem. Theory Comput. 19, 6733 (2023).)、等を行い、記載の学会誌に発表した。これらは、正確な予言的合成化学の基礎になる成果であり重要である。特に、③の研究では、昨年のLi2の9個の価電子基底・励起状態のフルなpotential curveの計算に続いて、有機星間分子として重要なCH+のやはり6個の基底・励起状態のpotential curveの計算を行い、昨年同様、あらゆる意味で完全に実験と一致するpotential curveを得ることができた。実際の計算は分子科学研究所の計算機センターの計算機を使って行われ、その報告書にもより詳しく報告している。これらの成果を基に、最初に述べた新しい機能を持つ物質を理論的に予測し、それを実際に創り出す道をも設計することのできる理論合成化学を確立するための研究を続けていきたい。
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