研究課題/領域番号 |
22H02052
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
河合 壯 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40221197)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | フォトクロミズム / センサー / 蛍光 |
研究実績の概要 |
放射線を高感度で検出し色調変化や蛍光発光強度の変化をもたらす高感度フォトクロミック分子ドシメーター材料の開発と、そのための学理開拓に取り組む。従来は放射線によるフォトクロミック分子の励起状態形成と異性化反応を利用しており、放射線作業従事者の安全管理に対応するためには1000倍程度の高感度化が必要となっていた。本研究では、放射線によって高効率に増幅形成する電荷分離状態を利用し、単一酸化活性種から1000を超える分子の異性化色調変化を誘導する超増幅反応系を利用する。高効率連鎖異性化反応による着色反応、連鎖反応による蛍光増強、酸化物やフッ化物等の無機ナノ粒子とのハイブリッドなどに取り組む。2022年度は高感度フォトクロミック分子の開発を進め、放射線による超増幅反応系の基盤となる酸化反応による高効率連鎖異性化反応についてその特性を解明するとともに蛍光強度変化による増幅応答性に向けた最適化を進めた。特に着色反応との両立を可能とする反応系の構築に成功した。また蛍光検出型についてはフェルスターの式から最適濃度を見積もることができた。フェルスターの式からは蛍光消光剤となる着色体の濃度に蛍光消光率が依存する。この際に、蛍光分子の濃度には依存しない。このことをふまえて推定される最適着色体濃度は5mM以上の高濃度であることが明らかになった。また蛍光分子としてはフォトクロミック分子の可視域での吸収波長と紫外域での発光波長を考慮した最適化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では放射線被ばくに対する即時視認性と高感度検出を両立させることから、【A】着色型連鎖反応系の構築、【B】連鎖蛍光増強反応系の構築、【C】放射線増感効果を有する無機ナノ粒子との連結による多重増感系の構築の3項目に取り組むこととし、2022年度は主に【A】に取り組み、新規の連鎖反応性フォトクロミック分子の設計とフォトクロミック反応や酸化異性化反応条件の最適化に成功した。特に連鎖開環反応では酸化反応もしくは紫外光もしくは放射線による光酸化反応をトリガーとして利用する。このため紫外光による着色反応を行う際に光酸化反応が進行すると着色よりもはるかに高効率の消色反応が進行することとなり着色が進行しない。このため着色型と連鎖反応との両立が大きな課題となる。本研究では様々な反応条件を検討した。365nmの近紫外光により光閉環反応を誘起し、一方、254nmの短波長紫外光により連鎖開環反応を誘起する反応条件を見つけることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度までの検討から、着色反応と連鎖消色反応を両立できる反応条件を見出した。【B】連鎖蛍光増強反応系の構築に関しては、フェルスターの式から最適濃度を見積もることができ、蛍光消光剤として機能する着色体は5mM以上の高濃度であることが必要となることが明らかになった。しかしこのような高濃度条件では紫外域の吸光度が大きく紫外光が試料内に侵入する光侵入深さが100μm以下になるものと想定される。このため反応系の攪拌条件に反応性が大きく依存するものと想定された。このようなむつかしさが予見されることをふまえ反応系や蛍光色素との組み合わせを最適化する必要がある。また【C】放射線増感効果を有する無機ナノ粒子との連結に関しては、最適化を進める必要がある。
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