研究課題/領域番号 |
22H02059
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池本 晃喜 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (30735600)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ナノカーボン分子 / 錯体 / π電子 / d電子 |
研究実績の概要 |
本研究は「ナノカーボン分子錯体の合成と機能展開」と題し,巨大湾曲π電子系を有するナノカーボン分子と金属錯体のハイブリット化を行い,その錯体化学を開拓する.構造が定まっていないことから,応用研究が主導となっている「ナノカーボン・金属複合体」の化学に対し,一義的な構造を有するナノカーボン分子錯体を合成することで,構造と物性の原理的理解をもたらし,新たな機能開拓を目指す. 本年度は,ナノカーボン分子骨格に埋め込まれた金属の結合の性質について重要な知見を得るとともに,ナノカーボン分子錯体の化学を開拓する上での基盤を拡充した.具体的な成果は以下の通りである.(1) ナノカーボン分子骨格に埋め込まれた金属は,強酸条件でも脱金属化が起きないという異常な結合を有していることが,従前の検討から分かっていた.結晶構造や理論計算を用いた結合の解析を行なうことで,この結合が主として静電相互作用によって安定化されていることを明らかにした.この知見をもとに,還元によって金属中心の正電荷を弱めることで,一部金属との交換反応が進行することを見出した (Chem. Asian J.誌に報告).(2) ナノカーボン分子錯体の設計・合成を行う上で,基盤となる湾曲ナノカーボン分子の構造の多様化は重要である.この観点から,新奇かご状分子 (Nat. Commun.誌に報告),新奇ボウル状分子 (Angew. Chem. Int. Ed.誌に報告) の設計・合成を行なった.(3) これらの湾曲ナノカーボン分子を用いることで,超分子錯体の会合比決定問題についての手法開拓を行なった.ベイズ推論を用いた会合比決定法や,van 't Hoffプロットを活用した検証法が有効であることを見出した.湾曲巨大ナノカーボン分子は複数個のゲストと超分子錯体を形成しうることから,ナノカーボン分子錯体を機能展開する上で重要な礎が確立できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
主題となる研究項目「1. 基礎技術の開発」,「2. ナノカーボン分子錯体の設計・合成」,「3. 機能展開」のいずれにおいても成果が出ている.特に,ナノカーボン分子骨格に埋め込まれた金属の結合の本質の理解が得られ,さらなる展開が期待できることから,順調に研究が進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見を活かし,配位環境の設計などを行い錯体としてのバリエーションを拡充し,系統的に評価していく予定である.金属交換反応においても一部の金属との交換反応は既に確立したが,汎用的な金属交換を可能とする手法を開発していく予定である.具体的には,FeやPdなどへの金属交換を通して,「3. ナノカーボン分子錯体の機能展開」の項目である酸化還元や触媒などへの応用展開に繋げていく予定である.
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