研究課題/領域番号 |
22H02063
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
上村 明男 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30194971)
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研究分担者 |
藤井 健太 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (20432883)
川本 拓治 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (70756139)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イオン液体 / 脂溶性 / 水溶性 / 液-液分配抽出 / 保護基 |
研究実績の概要 |
1.スイッチング特性の閾値付近における溶液状態の物理化学的考察:各種スイッチングイオン液体を合成し、その脂溶性と水溶性について液-液分配実験を通じて検討を行う。カチオン種及びアニオン種を様々に変化させることで物理的特性の変化を調べた。これらについてイミダゾリウム、ホスホニウム、アンモニウム、ピリジニウムなどのカチオンを有するイオン液体を合成し、その溶解特性を研究した。そしてカチオンの炭素数も溶解性のコントロールに重要な役割を果たすことを見いだした。これらをまとめてACSOmegaに論文を公表した。アニオンの種類については現在も検討を進めている。 2.温和な条件で何度も繰り返し利用できるスイッチングイオン液体の開発:ジオールユニットの保護基をアセタール以外のものに展開し、その脱着特性に変化を持たせることでスイッチングイオン液体の相互変換を容易にする。炭酸エステルの脱着に関して新しい知見を得つつある。1,2-ジオールを環状炭酸エステルに変換する代表的反応条件である炭酸ジメチルと炭酸ナトリウムを作用させたとき予想外の生成物を高収率で得たことを見いだした。 3.不可逆的であるが極めて迅速に溶解性を転換できるイオン液体の開発: 化学的により温和な条件で脱着可能な保護基を用いて、溶解特性を定量的活劇的に変化させるイオン液体を開発する。当初のアイデアである鎖状アセタールを用いた手法の検討では合成が容易でないような検討結果を得たので、新たなアイデアを模索して計画中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.スイッチング特性の閾値付近における溶液状態の物理化学的考察:ジオールの保護基としてアセタールを用いたスイッチングイオン液体を合成した。カチオン種としてはアンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ホスホニウムのものを合成し、アニオン種としてはトリフルオロメタンスルホンアミド、トリフラート、フルオロスルホナート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレートのものを合成した。多くの場合でジオール型は水溶性、アセタールは脂溶性が観察されたが、カチオン側のアルキル基が長くなるにつれ脂溶性が高くなる傾向が見られた。この溶解特性変化はアニオンの変化によっても影響を受けた。 2.温和な条件で何度も繰り返し利用できるスイッチングイオン液体の開発:異なる保護基として環状カーボナートへの変換を試みた。ジオール型スイッチングイオン液体に炭酸カリウム存在下炭酸ジメチルを作用させたところ、予想に反して脱水反応が進行してビニルアンモニウム型イオン液体を高収率で得た。現在この新規イオン液体の物性と化学性について検討している。 3.不可逆的であるが極めて迅速に溶解性を転換できるイオン液体の開発:カチオン鎖をアセタールで進捗したイオン液体を合成し、酸加水分解によって脂溶性を水溶性へと変換するイオン液値の合成を進めている。 4. 合成したジオール型スイッチングイオン液体を用いて金属イオンの溶媒抽出を行った。脂溶性イオン液体を有機相として水溶液中の金属イオン(モデル系としてNiイオン、Ndイオンを選択)の分離抽出を試みたところ、適切な疎水性配位子を用いることで定量的な抽出が可能となることが明らかとなり、その抽出平衡定数を決定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの知見から今後、1.カチオン部分のバリエーションとして水酸基の数の変化の検討を進め、より高い水溶性を獲得できるスイッチングイオン液体の合成、および2.ビニルアンモニウム型イオン液体の物理的及び化学的特性の検討、を進める。特に後者は有用な有機合成中間体としての活用も見込まれるので、変換反応の一般性と生成物の化学反応の両面から集中的な研究を進める。
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