研究課題/領域番号 |
22H02065
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
沼田 宗典 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (70423564)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 分子集積化学 |
研究実績の概要 |
本課題では、マイクロ流体の直線運動量を超分子-分子反応のエネルギーとする独自の戦略を基軸として、超分子構造の特定の位置に望みの分子を選択的に接合させる技術の開発を目指した。既に2種類のペリレンビスイミド誘導体を用いて、ポリマー末端への分子衝突を駆動力としたAB型ジブロックポリマーの創製を報告している。そこで 2022年度は、これまでの知見を基に、ポルフィリン分子を用いたAB型ジブロックポリマーの創製を目指した。この実験により本系の一 般性が確かめられることを期待した。 まず、水溶性ポルフィリンとして知られているTPPSポルフィリンを用い、超分子ポリマーを通常のサンプル管を用いた方法により調製した。このTPPS超分子ポリマーの溶液に、側鎖部の立体的が異なるTPPS誘導体(第2モノマー分子)を加え、混合溶液をマイクロチャンネルにインジェクションした。配向化した超分子ポリマーの片末端に第2モノマーが次々と連結す ることで異種分子接合部を持つABブロック構造が創製することを期待した。 マイクロチャンネルから流出した溶液の分光測定の結果、モノマーの添加量の増加に伴い、超分子ポリマーの成長反応が促進していることが明らかとなった。この結果は、第2モノマーがTPPS超分子ポリマーの末端に反応していることを示唆する。さらに、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた構造解析の結果、期待した通り、TPPSポルフィリン末端に第2モノマーが選択的に結合していることが明らかとなった。さらにファイバー構造に沿った高さ解析の結果、第2モノマーはTPPS超分子ポリマーの片方の末端のみから異方的に成長していることも明らかとなっている。以上の結果より、当初期待した通り、マイクロ流体のエネルギーを用いた超分子末端と異種分子との接合が、分子骨格に依存せず様々なπ共役系分子で起きることが明確に示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の大きな目的の1つはマイクロ流体のエネルギーを用いて「様々な異種π共役分子同士を確実に接合する基盤技術を確立する」ことである。2022年度はポルフィリン分子を用いてこの分子接合技術が確立できた。既にペリレンビスイミド(PBI)誘導体を用いて同様の接合技術を確立しているが、本実験で用いたポルフィリンは水溶性であり、本実験は水を溶媒として実施されたことがこれまでのPBIを用いた実験と大きく異なっている。つまり、有機溶媒を用いたPBI分子の実験と、今回実施した水を溶媒としたTPPSポルフィリンの実験の結果を統合すると、本分子接合技術は広汎な溶媒系で利用できる汎用性を持っていることを示している。こうした知見は当初目的としていた本系の一般性を明確に示している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は昨年度までに確立した反応系をさらに拡張し、さまざまなπ共役系分子同士の接合を実施する予定である。特に、π共役系分子骨格の歪みや周辺の立体障害が存在する場合にも、マイクロ流体の作用により、能動的な会合が起きるのかどうかについて詳細な検討を実施していく予定である。この実験を通して、通常は反応性が低い分子同士の間にも有効な分子接合が起こるかどうかの検証を行う。さらに、AB型ジブロックポリマーの創製技術を基にして、分子数・分子配列・方向を同時に制御したトリブロックポリマーの創出に挑戦する予定である。
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