研究課題
令和4年度は、本研究の目的化合物であるトリオキソトリアンギュレン(TOT)中性ラジカルのヘリカル連結体の基本骨格となる二量体の設計・合成を行った。研究ターゲット1の「TOTのらせん状π共役連結体の合成」については、キラルな置換をもつフェニレン基で架橋したTOT二量体の合成に成功した。電気化学測定および分光測定から、中性ラジカル種において2つのTOT骨格間に電子的な相互作用が起こることを実験的に明らかにした。一方、中性ラジカル種については難溶性であったため、電子スピン物性および磁気的な相互作用を明らかにできていない。研究ターゲット2の「TOTとらせん状オリゴマーとの複合化」については、らせんキラリティーをもつ分子として知られているヘリセンおよびビナフチル骨格に着目し、これらを介して連結したTOT二量体の合成検討を行った。ヘリセンおよびビナフチル連結体については、ラセミ体であるがその合成方法を見出すことができた。
3: やや遅れている
TOTのヘリカル連結体の基本骨格である二量体について、光学活性体およびそのラセミ体の合成を達成し、キラル置換基をもつフェニレン架橋体ではTOT骨格間の電気的相互作用を明らかにした。これらは研究目標であるTOTのヘリカル連結体の合成ならびに機能探索をする上で必要不可欠な情報であり、物質合成については研究は順調に進展していると判断される。一方で、キラル光学特性については中性ラジカル種が極めて難溶性であるために現時点で実験ができておらず、この面については共同研究先を探して実施する必要がある。
研究ターゲット1の「TOTのらせん状π共役連結体の合成」については、これまでに合成した二量体は中性ラジカル状態で難溶性であったためにに、キラル光学特性を調べることができなかった。そこで溶解性を向上させられる誘導体の合成を計画している。また、合成したものについて単結晶X線 構造解析を行い、キラリティーと複合化した磁気物性および電気伝導物性の発現の可能性について検討する。上記の物性調査の結果をふまえ、さらなる多量体の設計・合成に挑戦する。 研究ターゲット2の「TOTとらせん状オリゴマーとの複合化」については、ヘリセンおよびビナフチル骨格を介して連結したTOT二量体については、光学活性体の合成・分離を行い、キラル光学特性を明らかにする。また、こちらについてもさらなる多量体の設計・合成に挑戦する。
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