研究実績の概要 |
2022年度は、フルオロアルケン類の連続環化により一連のアセン合成法を開発した。入手容易な出発物質であるマロン酸ジエステルから二つのアリール基を有する(トリフルオロメチル)アルケンを調製し、環化前駆体とした。これに対し、(i)ジメチルアルミニウムクロリドを作用させ、ドミノ形式の連続環化で一挙に二環を形成し、フルオロジヒドロ[4]アセンを得た。さらに、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン (DDQ) による脱水素で、5-フルオロ[4]アセンを合成することに成功した(A法)。また、環化前駆体に(ii) ジメチルアルミニウムクロリドとトリメチルアルミニウムからなる二元系ルイス酸を作用させ、まず一環を形成した。得た二環式ジフルオロアルケンにトリフルオロメタンスルホン酸を作用させ、さらにもう一環を形成して四環式ケトンとした。置換基導入と芳香族化により、5位にアリール基を有する[4]アセンを合成することに成功した(B法)。加えて、(iii) 上で得た二環式ジフルオロアルケンに対し、トリフルオロメタンスルホン酸の存在下でDDQを作用させ、ジフルオロアリルカチオンを経て四環式エノンとした。これに二つの置換基導入と脱水素を行い、5,6位に二つの置換基を有するジヒドロ[4]アセンを合成することにも成功した(C法)。
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