研究課題/領域番号 |
22H02074
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
柴富 一孝 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 教授 (00378259)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | スピロ化合物 / 不斉合成 / 有機分子触媒 / SN2反応 / 塩素化反応 / 脱炭酸反応 |
研究実績の概要 |
スピロ化合物は二つの環構造が一つの原子を中心として結合した化合物の総称である。スピロ化合物は回転可能な結合が少なく、構造全体が強い剛性を有する特異的な性質を持つ。医薬品をはじめとする多くの機能性分子は、分子内の一部の部分構造が三次元空間上の特定の位置に配置された際に機能を発現することから、スピロ化合物の強い剛性が機能発現に有利に働く場合が多い。実際に多くの医農薬品、天然有機化合物がスピロ構造を持っている。 一方で、スピロ化合物は往々にして大きな構造的歪みを持つため、一般的に合成は容易ではない。これまでに、反応性の高いラジカル種を経由する方法、分子内アルキル化反応を利用する反応などが多く報告されている。しかしながら、合成できる構造の一般性や立体制御の観点から、効果的な手法のさらなる開発が望まれている状況である。このような背景を踏まえ、本研究ではスピロ化合物およびスピロ構造を内包する多環性化合物の簡便な合成法の確立を目的とした。 以前に筆者らは、独自に開発したキラルアミン触媒を用いたβ-ケトカルボン酸の脱炭酸を伴う不斉塩素化反応に成功した。さらに、得られたα-クロロケトンの塩素原子を脱離基としたSN2反応が第三級炭素上であるにもかかわらず円滑に進行することを見出している。これを踏まえて今回、環状α-クロロケトンの末端に反応性官能基を導入して、分子内SN2反応を行うことでスピロ化合物を合成した。具体的には、末端に塩素原子を持つα-クロロケトンの不斉合成と続く分子内SN2反応および分子間SN2反応によってスピロエーテルを合成する手法を開発した。さらに、末端にアシル基を持つα-クロロケトンを用いた分子内SN2反応およびアルドール縮合反応によってスピロ構造を内包する多環式化合物を不斉合成することにも成功した。いずれの化合物群も従来の合成手法では不斉合成が困難な化合物である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
末端に塩素原子を持つα-クロロケトンの不斉合成と続く分子内SN2反応および分子間SN2反応によってスピロエーテルを合成する手法を開発した。さらに、末端にアシル基を持つα-クロロケトンを用いた分子内SN2反応およびアルドール縮合反応によってスピロ構造を内包する多環式化合物を不斉合成することにも成功した。いずれの化合物群も最高で90%eeを超える高い光学純度での合成に成功した。また、末端にエステルおよびニトリル基を持つα-クロロケトンの分子内SN2反応によるスピロ化合物の不斉合成にも一部成功した。これらの結果は当初計画していたものであるが、予定を上回る進捗である。
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今後の研究の推進方策 |
末端に塩素原子を持つα-クロロケトンの不斉合成と続く分子内SN2反応および分子間SN2反応によるスピロエーテル合成に関する論文を執筆し投稿する。また、末端にアシル基を持つα-クロロケトンを用いた分子内SN2反応およびアルドール縮合反応によって得られた多環式化合物の誘導反応について検討し、同化合物の不斉合成法と併せて論文執筆及び投稿を行う。さらに、末端にエステルおよびニトリル基を持つα-クロロケトンの分子内SN2反応によるスピロ化合物の不斉合成について基質一般性の拡大を行う。
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