研究課題/領域番号 |
22H02080
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
木村 正成 長崎大学, 工学研究科, 教授 (10274622)
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研究分担者 |
チェン バン 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (90786162)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 有機ホウ素 / アルキン / 銅触媒 / アルデヒド |
研究実績の概要 |
位置および立体選択的な炭素-炭素結合形成反応の開発は,分子骨格構築の重要な手段である。本研究では末端アルキンを出発原料として,オキサボロール等の環状有機ホウ素化合物を経由した高選択的炭素-炭素結合形成反応の開発を目指す。オキサボロールの特異な生物活性や発光特性に着目し,幅広い用途として活用することを目的として,様々な官能基変換反応の有機ホウ素鍵中間体を合成する。本研究では末端アルキンからオキサボロールを形成する機構解明を行うと共に,ホスフィンボラン配位子合成への展開,多置換アルケンの高選択的合成,害虫忌避性を示す生物活性物質や含ホウ素発光材料等の有用な機能性物質創製を目的とする。精密合成化学の観点からだけでなく,高効率合成法に根差したグリーン化学の進展と生成物の高い付加価値に関わる機能性材料の新規合成手法として研究意義は高い。 本研究では,末端アルキン・有機ホウ素・親電子剤の三成分から,含ホウ素環状化合物をはじめアルケニルボランを一段階で合成するための分子変換を確立した。その際,活性種の単離を試みたが,非常に安定性に乏しくNMRでの同定やX-線解析までには至らなかった。しかし,今回,中間体であるアルケニルボランの異性化機構を検証した。 銅触媒存在下,末端アルキンとトリアルキルホウ素およびアルデヒドの共存下で反応を行ったところ,アルキンには芳香族置換基が導入された場合に選択的にアルデヒドと炭素-炭素結合を起こすことが分かった。また250nmの光照射下で反応を行うと,収率の向上がみられたことから,本反応は光エネルギーを受けることにより,銅触媒のみでは示さない新たな反応が展開できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度において,末端アルキン・有機ホウ素・親電子剤の三成分から,含ホウ素環状化合物をはじめアルケニルボランを一段階で合成する分子変換を確立した。その際,活性種の単離を試みたが,非常に安定性に乏しくNMRでの同定やX-線解析までには至らなかった。しかし,中間体であるアルケニルボランの異性化機構を検証した。その結果,銅触媒存在下,末端アルキンとトリアルキルホウ素およびアルデヒドの共存下で反応を行ったところ,アルキンには芳香族置換基が導入された場合に選択的にアルデヒドと炭素-炭素結合を起こすことが分かった。また250nmの光照射下で反応を行うと,収率の向上がみられたことから,本反応は光エネルギーを受けることにより,銅触媒のみでは示さない新たな反応が展開できることが分かった。 末端アルキン・有機ホウ素・親電子剤の三成分から,アルケニルボラン中間体を選択的に制御できたことから,本課題は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
銅触媒を用いた末端アルキン・有機ホウ素・アルデヒドによる三成分連結反応は,アルキン上の置換基や有機ホウ素の種類によって位置選択性に影響を与えることがわかった。これまでの研究成果から,芳香族置換基に隣接するアルケン炭素上ではアルデヒドが付加反応するが,脂肪族置換基が隣接するアルケン炭素上では有機ホウ素が転位する傾向があることが分かった。反応温度や反応時間によって,選択性に顕著な差が見られないことから,置換基の電子的効果が位置異性体形成に影響を及ぼすものと思われる。現時点では,活性種はアルケニルボリル銅であると予想しているが,その存在を示唆する単離や測定に至っていない。計算化学を含め反応機構が明らかになれば,アルケニルボランを介した新たな反応へ展開できる。一方,活性中間体としてボラシクロプロペン(ボラチレン)の可能性も否定できず,アルキニルボレートからボラチレンを経由するオキサボロールの合成法について検証する。光照射下や電極反応条件下でボラチレンを別途単離し,ビニルカルボアニオン活性種の新しい形成法と反応性について精査する。
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