研究実績の概要 |
本研究では、これまでに報告例のないアライン中間体を活用したビアリール誘導体の触媒的不斉合成を計画し、検討を行った。2-トリフロメタンスルホニル-3-TMSビアリール誘導体に対して、フッ素アニオン存在下でアラインを発生させると、オルト2置換のビアリールに変換されるために、軸不斉が消失しビアリール軸周りの自由回転が可能なビアリール中間体が発生すると考えられる。そこで、この動的ビアリールアライン中間体一分子とアルキン二分子とキラル遷移金属触媒による [2+2+2] 環化反応が進行すれば新たに芳香環構築され再びオルト3置換ビアリールとなることで、軸周りの自由回転が阻害されて光学活性な軸不斉ビアリールが合成できるのではないかと考えた。同様にしてこのような動的なビアリールアライン中間体二分子とアルキン一分子との [2+2+2] 環化反応がキラル遷移金属触媒存在下で進行すると、今度は2つの軸不斉を有するターアリール誘導体の触媒的不斉合成に展開できる可能性が考えらる。このような計画に基づき、まずはビアリールアライン前駆体にを用いてを2当量のアルキンとの交差環化三量化によりビナフチル誘導体の合成を検討した。その結果、様々な不斉配位子を検討したところ、(S)-QUINAP、(S)-MONOPhos, (R,R) -iPr-DUPHOSの配位子を用いた場合に於いてビアリールアライン:アルキン=1:2の環化生成物が選択的に生成することがわかった。しかしながら、これらの配位子では軸不斉誘導は起こらずにラセミ体を得た。これに対して次に配位子として2座のホスフィン配位子である(S)-BINAPを用いて同様の反応条件にて反応を行ったところ、ビアリールアライン:アルキン=2:1のターアリール環化生成物が得られることがわかった。さらに、major体の収率13%、31%eeで不斉を誘導することに成功した。
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