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2022 年度 実績報告書

光と金属の協働作用を利用した高反応性化学種の反応制御に基づく新規合成反応の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22H02083
配分区分補助金
研究機関学習院大学

研究代表者

草間 博之  学習院大学, 理学部, 教授 (30242100)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードアシルシラン / 光異性化 / カルベン / カルベン錯体
研究実績の概要

本研究は「光の作用により発生させた高反応性化学種」を「遷移金属種の特徴的な反応性」を活用して反応制御することで、既存の手法では実現困難な分子変換法を開発しようとするものであり、具体的には1)アシルシランの光異性化で生じるカルベンを、金属種により活性化された有機分子との反応に活用することで、光のみ、あるいは金属種のみでは実現困難な独創的分子変換法を開発すると共に、2)アシルシランの光異性化で生じるカルベンと金属種の直接反応でカルベン錯体を発生させることで、カルベンの極性転換ならびに反応制御を実現し、触媒的合成反応に利用することを目指している。
本年度は、1)に関する検討に注力した。まず、アリルアルコール誘導体を適切な遷移金属種との反応によりπ-アリル錯体へと変換して求電子性を向上させ、シロキシカルベンとの分子間カップリングを実現すべく検討を行った。その結果、目的とする反応はパラジウム触媒を用いることで効率良く進行すること、また、アリルアルコール誘導体の脱離基、反応温度を適切に制御すると、カップリング反応の位置選択性を逆転させることが可能であることを明らかにした。さらに、本反応で用いる求核剤はカルベンであることから、適切に修飾されたアリルアルコール誘導体を基質とすることにより、カルバニオンを求核剤とする辻ーTrost型反応では実現不可能な連続的炭素-炭素結合形成が実現できることを見出した。
また、単純アルキンを適切な遷移金属種で求電子的に活性化することで、シロキシカルベンとの反応を実現すべく検討を行った結果、アルキル置換アシルシランと末端アルキンとの分子間カップリング反応が、適切な銅塩を共存させることで進行することを明らかにした。この反応で生じると考えられる金属を含む反応中間体は、さらに多様な有機分子と反応する可能性があることから、今後、多成分連結反応への展開が期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は研究課題として掲げた2つの主題のうちの1つである、「アシルシランの光異性化で生じるカルベンと、金属種により活性化された有機分子との反応にによる独創的分子変換法の開発」に取り組み、シロキシカルベンとは直接反応することのない不飽和分子である、アリルアルコール誘導体や末端アルキンとの分子間カップリング反応を実現した。これは、上記課題を実現するための基盤的成果と言えるものであり、この知見を元に今後の研究を展開することで、さらに多様かつ独創的な分子変換手法の開拓が可能と期待される。従って、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

前項で記したように、本研究課題の2つの主題のうちの1つについては、順調に進展しているため、継続的に研究を展開することで、さらに多様な分子変換手法の開拓を目指す計画である。
また今後は、もう一つの主題である「アシルシランの光異性化で生じるカルベンと金属種の直接反応によるカルベン錯体の発生と触媒的合成反応への利用」について、より多くのエフォートを費やす計画である。具体的には、アシルシランの光異性化で生じる短寿命のシロキシカルベンと多様な金属種との直接反応によるカルベン錯体の生成条件の探索を徹底して実施するとともに、ここで得られた知見を元に、金属カルベン錯体を反応中間体とする新規な触媒的分子変換手法の開拓研究へと展開する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Photoinduced Intramolecular Cyclization of Acylsilanes Bearing a Boronate Moiety: Construction of a Highly Strained <i>trans-</i>Fused Bicyclo[3.3.0]octane Skeleton2022

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi Kohei、Shimizu Tsukasa、Miura Arihito、Ishida Kento、Kusama Hiroyuki
    • 雑誌名

      Organic Letters

      巻: 24 ページ: 5807~5811

    • DOI

      10.1021/acs.orglett.2c02337

    • 査読あり
  • [学会発表] 光化学的に発生させたシロキシカルベン種を利用したボラサイクルからカルボサイクルへの変換手法2023

    • 著者名/発表者名
      松岡優、斉藤瑛莉子、山口航平、石田健人、増田涼介、草間博之
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会
  • [学会発表] 光誘起電子移動反応とSNV反応を利用した2-フルオロピロール誘導体の新規合成法2023

    • 著者名/発表者名
      茶谷実里、増田涼介、草間博之
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会
  • [学会発表] 光励起による(o -カルボニルベンゾイル)シランからの1,3-ジオキシイソベンゾフランの生成とその反応1,4-ジヒドロキシナフタレン誘導体の新規合成手法2022

    • 著者名/発表者名
      石田健人、阿出川穗、佐藤純平、清水司、草間博之
    • 学会等名
      第82回有機合成化学協会関東支部シンポジウム
  • [学会発表] 光と銅塩の協働作用によるアシルシランとアルキンとの分子間カップリング反応2022

    • 著者名/発表者名
      山口航平、石田健人、草間博之
    • 学会等名
      第82回有機合成化学協会関東支部シンポジウム
  • [学会発表] ビスシリルイミンとシロキシエンインとの分子間カップリング反応による多置換ピロールの合成2022

    • 著者名/発表者名
      茶谷実里、石山佳樹、増田涼介、石田健人、草間博之
    • 学会等名
      第51回複素環化学討論会
  • [学会発表] 光とパラジウム触媒の協同作用によるアシルシランとクロチルアルコール誘導体とのカップリング反応 : 位置選択性について2022

    • 著者名/発表者名
      加藤裕治郎、藤倉悠太、山口航平、増田涼介、石田健人、草間博之
    • 学会等名
      第83回有機合成化学協会関東支部シンポジウム
  • [学会発表] 光誘起電子移動反応を利用したビスシリルイミンと共役エンインとの分子間カップリング反応2022

    • 著者名/発表者名
      茶谷実里、石山佳樹、石田健人、増田涼介、草間博之
    • 学会等名
      第83回有機合成化学協会関東支部シンポジウム

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公開日: 2023-12-25  

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