研究課題/領域番号 |
22H02087
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中田 雅久 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50198131)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 全炭素四級不斉中心 / 多環式天然物 / 付加環化 / 不斉全合成 / 立体選択的 |
研究実績の概要 |
これまで開発した不斉触媒反応を活用することにより不斉第四級炭素を縮環部に備えたいくつかのキラルビルディングブロックを創製し、それらをもとに各種抗腫瘍性多環式天然物の不斉全合成に有用な共通合成中間体の合成を検討した。具体的には、不斉有機触媒、不斉金属触媒を用いた不斉触媒反応の開発と活用を検討した。 xerophilusin Iの不斉全合成においては、触媒的不斉分子内シクロプロパン化反応と生成物の立体選択的変換による光学活性合成中間体の合成法を開発した。エナンチオ選択性の向上を検討中である。また、別のルートとして、不斉有機触媒を用いる分子内マイケル反応による鍵中間体の合成を検討中である。 bruceantinの不斉全合成においては、不斉有機触媒を用いて合成したキラル合成中間体からアリル位にアキシャルヒドロキシ基を備えたエノールトリフラートの立体選択的合成に成功した。生成物からPd触媒を用いた2H-pyran-2-one誘導体への誘導を検討中である。 kobusineの不斉全合成においては、不斉有機触媒を用いた分子内マイケル反応によるヘテロ原子結合メチル基を備えた不斉第四級炭素形成を伴う鍵合成中間体の合成を検討中である。ヘテロ原子結合メチル基を持つ基質の分子内マイケル反応は困難であるため、ヒドロキシ基に変換可能なシリル基の結合するメチル基を持つ基質で検討を行っている。 6α-acetoxyanopterineの不斉全合成においては、有機不斉触媒を用いた不斉第四級炭素の形成を伴う2H-pyran-2-one誘導体の高エナンチオかつ高立体選択的な[4+2]付加環化の開発に成功し、生成物の絶対配置は誘導体のX線結晶構造解析により決定した。得られた生成物から酸化的脱芳香族化-[4+2]付加環化連続反応の検討に必要なフェノール誘導体への立体選択的変換を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては縮環部に不斉第四級炭素をもつ抗腫瘍性多環式天然物の共通合成中間体の創出と共通骨格構築法の開発を行い、それらを活用した各種抗腫瘍性多環式天然物の不斉全合成の達成と新規生物活性誘導体の創製を目的とし、既存の反応・手法により標的分子の不斉全合成を追及するのではなく、独自開発したキラルビルディングブロック・反応・手法に根ざすユニークな効率的不斉全合成を目指している。 xerophilusin Iの不斉全合成においては、生成物を71% eeで与える触媒的不斉分子内シクロプロパン化反応を見いだした。さらなる検討によりエナンチオ選択性を90% ee以上とするべく基質構造の最適化を行っている。一方で、基質のかさ高さのため反応が遅く収率が若干低いため、別ルートとして、不斉有機触媒を用いる分子内マイケル反応による鍵中間体の合成を検討中である。 bruceantinの不斉全合成においては、α、β-不飽和エノンへのピナコールボランの高立体選択的マイケル反応を見出し、続くエノールトリフラートの形成、C-B結合の酸化によりアリル位にアキシャルヒドロキシ基を備えた2H-pyran-2-one誘導体への変換に用いる基質の合成に成功した。現在、アキシャルヒドロキシ基の保護基を検討中である。 kobusineの不斉全合成においては、玉尾酸化によりヒドロキシ基に変換可能なシリル基の結合するメチル基を持つ基質で不斉有機触媒を用いた分子内マイケル反応を検討中である。 6α-acetoxyanopterineの不斉全合成においては、不斉第四級炭素の形成を伴うメタアクリロニトリルと2H-pyran-2-one誘導体の高エナンチオかつ高立体選択的な[4+2]付加環化の開発に成功し、97%、85% ee、dr=18/1で生成物を得た。その絶対配置は誘導体のX線結晶構造解析により決定し所望の構造をもつことを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
xerophilusin Iの不斉全合成においては、触媒的不斉分子内シクロプロパン化反応のエナンチオ選択性が基質構造により変化するため、エステル部分の構造を変えてエナンチオ選択性向上を目指す。また、別の鍵中間体合成法として不斉有機触媒を用いる分子内マイケル反応を検討する。マイケルアクセプターとして好結果を与えているニトロアルケンの構造との類似性よりs-cis構造をとりやすいオキサゾリジノンのα、β-不飽和イミドの反応を検討する。 bruceantinの不斉全合成においては、Pd触媒を用いたエノールトリフラートと酢酸ビニルのHeck反応と続く環化により2H-pyran-2-one誘導体を合成し、塩基存在下に[4+2]付加環化を行い、系中で生成物のE1CB脱離をおこすことにより平衡を生成系へ動かす手法を確立する。そしてさらなる立体選択的変換によりbruceantinの世界初不斉全合成を目指す。 kobusineの不斉全合成においては、ジメチルフェニルシリルメチル基をα位に有するアルデヒドの不斉有機触媒を用いた分子内マイケル反応を検討し、生成物の玉尾酸化によりヒドロキシメチル基結合不斉第4級炭素をもつ合成中間体を得る。一方で、xerophilusin Iの合成研究との共同研究としてオキサゾリジノンのα、β-不飽和イミドをマイケルアクセプターとする不斉触媒反応を検討する。 6α-acetoxyanopterineの不斉全合成においては、メタアクリロニトリルと2H-pyran-2-one誘導体の高エナンチオかつ高立体選択的な[4+2]付加環化により収率97%、85% ee、dr=18/1で得た生成物の誘導体を用いPd触媒による含窒素架橋環形成を検討する。その後、分子間ラジカル反応によりスチレン誘導体との反応によりフェノール誘導体とし、酸化的脱芳香族化-[4+2]付加環化連続反応を検討する。
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